「姪と一緒にお酒を飲みたい」
〜東葛看護学校の学生とともに希望をかなえる〜
代々木病院5階病棟 看護師長 原 由絵
成人V(総合)実習として、東葛看護学校の学生2名が病棟に来ました。学生からは「ターミナル期の患者の看護を学びたい」という希望が出され、チームとしても肺癌患者のH氏を受け持ってもらったらという意見が出され、H氏にお願いをしました。H氏は「自分なんかでお役にたてるなら」と、快く承諾してくださいました。
●学生とチームが一体となって
H氏は85歳の女性で、肺癌のため呼吸困難、背部痛があり、MSコンチンを飲んで痛みの調整をしていらっしゃる方です。
学生は、事前に十分な情報収集を行って実習に臨んできてくれていました。H氏と積極的にコミュニケーションをとり、H氏の生活背景や希望することなどをつかみ、チームに情報提供を行ってくれました。また、病状としてはペインコントロールが重要で、コントロールをつけるためには、日々の観察が重要な時期でした。
チームとしては、“学生の看護計画はチームの計画でもある”と位置づけ、H氏のカルテに看護計画を挟み、学生の日々の行動計画を把握し、病状に合わせた計画をアドバイスしながら学生とチームが一体となりH氏の看護にとりくみました。
ある日学生が、H氏の「姪と前のようにお酒を一緒に飲みたいわ」という願いをつかみ報告してきました。その希望をかなえるためカンファレンスを開催しました。チームメンバーから「すべての患者に同じことができない。平等にならない。病院は禁酒となっているのにお酒を飲ますのはおかしい」などの意見も出ましたが、今H氏にできることを精一杯行うことが私たちの看護であることを話しあい、実行に移すことにしました。
●今できる最大限の努力を続けていきたい
当日は天候にも恵まれ、隣のレストランの協力を得て実施。H氏は癌のための痛みが強くあり、隣のレストランまで行けるか不安でしたが、H氏の期待している気持ちを大切にし、急きょ看護体制を強め、安全・安楽な手立てを取って実行に移しました。
明るい太陽の下、リクライニング車椅子に乗り酸素吸入をしてお酒を飲む姿は、見た目には病人ですが、H氏の満足そうな笑顔、姪御さんの笑顔はとても素敵でした。「おいしかったわー」と満面の笑みを浮かべ、大好きな姪御さんと共に、要求が叶った喜びを味わっていらっしゃいました。短時間でしたが学生も私たちも一緒に有意義な時間を過ごさせていただきました。H氏はそのときの写真を最後までベッドサイドに飾り大切にしていらっしゃいました。
私たち看護師は、患者のいちばん身近にいることのできる立場にいます。しかし、厳しい医療情勢の中、ゆとりがなく、重症、認知症、手術、検査等さまざまなことに対応しなけばならず、患者の思いに十分応えられるような看護ができていないのが現状です。そんな中でも、今できる最大限の努力をこれからも続けてゆきたいと思います。
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