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協同組合報vol.41

トピックス(2) 座談会

看護集団が動けば医療が変わる!

―楽しくやろうよ、看護師確保大運動

[参加者(あいうえお順)]
斉藤和子(東京勤医会法人看護部副部長)
松尾 芳(かおり)(東葛病院5西看護師長)
宮崎洋子(東京勤医会労組副委員長)
・ 司会/二戸幸子(東京勤医会法人看護部部長)

看護の現場は今

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司会の二戸さん
【司会】今年4月から勤医会の法人をあげて、看護師確保の大運動を行っています。看護の現場では、数年前から「看護の3大テロ」というショッキングな表現がされるほど、大変になってきています。テロという表現はともかく、「3大テロ」とは、在院日数の短縮、IT化、安全・安心の問題を指しています。こうした中で、新卒の看護師さんたちの1割近くが1年もしないうちに離職してしまう、バーンアウトやメンタルな病気を抱える看護師さんが増えているなど、本当に厳しい実情です。
 これに追い討ちをかけるように、今年4月の診療報酬の改訂で、7:1看護基準が出され、看護師の人数をこの水準まで上げれば経営も守れると言われています。そこで、大病院を中心に一挙に倍の看護師を獲得するといった動きも出ているわけです。T大病院の院長が看護師獲得のために九州に飛んだとか、百万円の支度金を出す所も出てきたとか、ディズニーランドの親子ペア宿泊券を配る、紹介者に紹介料を出すなど、看護界は今大変な騒ぎです。
 そういう騒ぎを耳にするにつけ、私たちは「冗談じゃないよ、看護師をお金で買うなんて」と憤り、何としても看護師確保の大運動を私たちの手で広げていかなければと思っているわけです。
 今日は、なぜ今大運動なのかということを議論しながら、今後の方向性について話し合いができればと思います。
 ではまず、今、看護の現場でどんなことが起きているのか、松尾さんからお願いします。

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松尾さん
【松尾】先日、師長会議で、他職種からの要望が出されました。栄養課からは「患者さんに食事を安全に運ぶために看護師はエプロンと帽子とマスクを着用してください」。放射線室からは、CTの機械が新しく入ってものすごく効率がよくなったんですが、逆に看護師さんの仕事が回らなくなったため、「血管確保を看護師さんが病棟でやってください」とか、「患者さんをどんどん下ろしてください。呼んでも患者さんが来ません」とか。
 看護師は目の前の仕事に追われ、なおかつ他職種からの“期待”というか、「これやってください」という要望がとても多くなっています。

【宮崎】そういう話を聞くと、時代が変わったなとつくづく思いますね。以前は、看護師の手が足りない時は、他職種の人が手助けしてくれました。その連帯が嬉しくて、頑張れたものだった。今は求められるものがいろいろな職種に及んできて、それが「看護師さん、ここまでやってよ」という要求になっているんだなと思いました。

【司会】医療が複雑になったり、急性期の展開が在院日数の短縮などで早くなったり、それこそ、現場の様相は数年前と大きく変わってきています。同時に患者さんの医療要求も高まり、より質の高い医療が求められているわけで、あれもこれもという感じになっています。患者さんとの接点の中核を担っているのが看護師集団ですから、求められるものも大変になってきているということでしょうね。

新人看護師をどう育てるか

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宮崎さん
【司会】そうした中で、今、1年目の看護師の1割近くが「とてもついていけない」と離職しているという現実があります。そこには看護教育の問題、社会の教育のありようなどさまざまな要因があると思いますが、1年目の看護師さんはどうですか。入職して4ヶ月がたちましたね。

【松尾】自立への取り組みについてですが、今年の卒1年目の看護師は去年に比べて夜勤開始を1ヶ月ほど遅らせました。今までは、夏休み前には自立してもらいたいというこちら側の思いがあったんですが、去年、ついていけない看護師がたくさん出ました。それだったら思い切って1ヶ月遅くしようということで、6月の後半から7月にかけて見習い期間とし、夜勤研修を4回やって、8月自立としました。
 つまり、新卒の実情に合わせて育てるようにし、こちらは臨機応変に工夫したり応援したりしています。

【宮崎】大事に育てていますね。東京医労連で新人看護師5000人にアンケートをとったんですが、都内では夜勤研修の回数が平均2回でした。4月の後半から夜勤研修に入り、5月には自立です。夜勤研修が1回の所もありました。

【司会】勤医会看護部では研修委員会で議論し、師長会議でも何回も話し合いながら、実情に合わせて丁寧に丁寧にということで取り組んでいます。その結果、去年は新人の離職率がゼロでした。
 もちろん全てがスムーズに行ったのではなくて、職場を変えてみたり、指導担当者の相談役をもうけたり、師長さんが応援したりとか、いろいろな応援の仕方を工夫してやってきたわけです。新人の退職者を一人も出さなかったということは、現場のご苦労を感じつつ、「頑張ってきて良かった」という一つの確信にもなっています。
 なかなか自立できなくて四苦八苦することもあるわけですが、そういうとき、師長さんとしてはどういう応援の仕方を心がけてきましたか。

【松尾】どこに問題があるのかを考えますね。頭ごなしにできないことを言うんじゃなくて。「どこまでわからないんだろう」というところまで掘り下げないと問題が見えてきません。

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斉藤さん

【斉藤】なかなか自立できない人も、「一人前の看護師になりたい」という気持ちはすごく持っています。そこを大事にしていくということでしょうね。

【司会】宮崎さん、東京医労連で新人看護師のアンケートをとったそうですが、そこからどんな問題が見えてきましたか。

【宮崎】新人看護師がやめていくという問題が出てきて、日本看護協会が調査を行ったところ、1年以内に離職する割合が9・3%、11人に1人という結果が出ました。この割合は04年、05年ともほぼ同じでした。こうした現実を踏まえ、東京医労連では都内の新人看護師からアンケートをとりました。回答は5066名でした。
 その中で、「これまでに職場をやめたいと思ったことがある」が81・7%、そのうち就職後3ヶ月以内が26・1%でした。その主な理由は「夜勤自立後の不安」で、「ミスを起こすのではないか」が78・2%でした。ミスを起こすのではないかという不安が退職のきっかけになっていることがわかったのです。
 日本看護協会では新人看護師に対して「基本技術に関する実態調査」を行っていますが、「就職時に一人でできる看護技術が少ない」という結果が出ています。教育終了時の能力と実際に看護現場で求められる能力には大きなギャップがあるということです。新人看護師は事故の不安におびえながら夜勤研修に励んでいるわけですが、その夜勤研修の平均が2回ということですから、どれほど不安の中で看護に従事しているかがうかがえます。
 こうした現状の中で、松尾さんが話されたように、勤医会は看護師が働き続けられるようなさまざまな努力をしています。その努力が退職率の低さに表れていると思います。

地域を日本を揺り動かす大運動を!

【司会】勤医会は今年の4月に「看護師確保推進本部」を立ち上げ、千葉、埼玉、東京の3ブロックそれぞれに推進会議をつくって運動を進めてきました。今回の勤医会の取り組みの大きな特徴は、労働組合と一緒に行動している点です。持続的な運動を共闘するのは初めての試みです。

【宮崎】勤医会労組としては、これまでも主張してきた、患者さんを守る、職場を守る、経営を守る、の3点から共闘していこうと。最初に出した共同アピールでは「地域を日本を大きく揺り動かす! 看護師確保の大運動」というスケールの大きな表題がつけられていますが、地域医療の崩壊が始まっていることを考えると、大運動を進め、世論化していくことがぜひとも必要です。
 今回の診療報酬改訂で療養病床廃止が打ち出されましたが、これは地方では「地域医療の崩壊だ」と言われています。地方では訪問看護やヘルパー派遣が財政的に成り立たない所が多く、療養病床を退院したら行く所がないんです。地方の市立病院ではお医者さんがいない事態が生まれていて、本当に地域医療の崩壊が始まっているのです。それに加えて7:1という看護加算の算定が始まって、まさに看護師争奪戦の火ぶたが切って落とされたような状況になっており、医師が足りない、看護師が足りない問題が大きな社会問題になってきています。
 このような地域医療の崩壊を押しとどめて、政府の押し進める医療・社会保障の切り捨てにストップをかける、そのためには看護師はもちろん、職員全員で行動することが重要です。10月27日に、まだ仮の名前ですが、「医師・看護師増やせ 10・27中央集会」を計画しています。この運動に法人あげて取り組んでいきたいと考えています。
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日本看護協会総会に全国から参加する看護師さんたちへのアピール行動(06年5月)

【司会】看護協会は、「看護師が足りないと言われますが、病床が減れば看護師は足りるんです」と言っています。日本の病床が多すぎるから看護師が足りないんだと。この発言は聞き捨てなりません。日本の医療の優れている点は、国民皆保険とかかりやすさなんです。悪くならないうちに病院にかかることができるから、世界一の長寿国になっているわけです。それを壊そうとしているのが医療に対する構造改革なのです。この点をしっかり踏まえつつ、私たちはこの間、各地域で行動を起こしてきました。その様子を斉藤さんからご報告願います。

【斉藤】推進本部を立ち上げたあと、東葛ブロック、代々木・千駄ヶ谷ブロック、三郷ブロックとブロック単位で取り組みを進めてきました。6万枚つくったビラは、ほぼ撒ききりました。
 今回の行動の特徴は各地域で工夫している点です。たとえば、代々木・千駄ヶ谷ブロックでは、「御茶ノ水駅周辺は看護師さんや看護学生がたくさん通るんじゃない?」とお茶ノ水行動を起こしました。「大きな団地には絶対看護師がいるよ」と光が丘団地行動も行いました。世田谷では農大通り診療所と一緒に行動を計画、20名近くが集まりました。
 東葛、三郷ブロックでは地域ごとに何回も何回もビラまきを行い、駅頭宣伝も旺盛に行っています。
 署名は現在7500筆集まりました。これを1日も早く1万の大台に乗せたいと考えています。また、この間の紹介活動としては、職員をはじめ、地域の方々、共同組織の方々などから65名の紹介があり、そのうちの約30名が入職につながっています。

【司会】当初は「まだまだおばさんクラブだね、若い人をどうやって引き込むか」という議論もしたんですが、最近は若い人がおおぜい参加しています。光が丘では大雨に降られ、世田谷では炎天下で脱水状態でしたが、「そのあとに飲んだビールがおいしかった!」と、楽しんでいる様子が報告されています。東葛病院ではある師長さんが地域で病棟で何百枚も署名を集めたという嬉しい話もあります。松尾さんの病棟ではどうですか。

【松尾】入院患者さんに全員声をかけて署名をお願いしていますが、書いてくれない人は一人もいません。「ナースコールにもっと早く出たいし、もっと行き届いた医療をやりたいと思っています。署名をお願いします。運動も一緒にやってほしい」と訴えています。
 先日、駅の街頭活動に行きましたが、子ども連れのお母さんが興味なさそうに通りぬけていくのを見て、「地域で小児科に安心してかかりたいと思っても、かかる病院がないと思われませんか」と訴えました。すると、立ち止まってビラを受け取って、「必ず返信しますから」と言ってくれる人もいました。

【斉藤】看護師を増やすことに反対の人はいません。機械的な訴えではなく、看護師の熱い思いで訴えていくことが大事ですね。

【司会】勤医会の看護師集団は600名、過半数が看護職です。看護師は患者さんとの接点が多い職種ですから、共感されやすい利点があります。現場は本当に大変ですが、大変だからやめる、というのではなく、自ら社会に訴えて前に進んでいきたいですね。
 民医連全体では署名が50万筆集まりました。全国から感動的な動きもたくさん報告されています。10月にむけてナースウエーブが計画されています。今度はドクターウエーブと一緒です。医師も看護師も足りない、日本の医療が壊されていくことに対して怒りの矛先をしっかり見据えて、元気に展望をもって頑張っていきましょう!



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