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協同組合報vol.39

事業所を訪ねる(38)
(株)東京医療問題研究所 ちひろ薬局

小さな芽を大事にして


おひな様通り

写真 西武新宿線沼袋駅を下りて、沼袋商店街通りに入る。と、デジャビュとでも言ったらいいのだろうか、何とも言えない懐かしさを感じた。「東京のもう一つのブクロ、沼袋」と不動産会社がウリ文句をひねり出しても、やはりここは池袋とは違う。古さが残っていて、下町のように親しみの湧く街なのだ。

 ちひろ薬局はこの商店街に溶け込むように看板を出している。1987年6月に開局、七つある東医研の小規模薬局の中では一番早いオープンだった。去年の11月に異動してきた小林幸枝薬局長は処方箋を持参する患者さんの年齢の高さにまず驚いたという。

 「明治、大正、昭和の初期生まれという、80代から90代の方がすごく多いです。ここは交通の便もいいし、東京の中では物価も安いので、古くから住み続けている方が大勢います」

 この商店街はゆるやかな坂になっている。若者や壮年なら気にもとめない傾斜だが、お年寄りにはきついらしく、「ちょっと休ませて」と、ちひろ薬局で一休みし、ひととき会話を楽しんでから、「ありがとう。疲れがとれたよ」と帰っていく人もいるそうだ。

 すぐ近くに中野区立歴史民族資料館があり、毎年2月から3月にかけて「おひな様展」を開催する。この資料館には、土地を寄贈した山崎家のひな人形や、江戸時代から昭和初期ごろまでの約40組もの古びなが所蔵されている。それらを飾り、町の人々はもちろん、遠くから古びな愛好家たちも訪れ、おひな様を愛でる。

 このイベントに合わせ、商店街でもそれぞれおひな様を飾り、「おひな様マップ」を作成して、訪れる人たちに気軽に立ち寄って楽しんでもらう。2月から3月にかけて、この辺りは「おひな様通り」になるのだ。

 今年、ちひろ薬局はこのイベントに初めて参加、薬局長のひな人形を飾り、マップに掲載してもらった。

 「去年の11月には江古田沼袋診療所と地域の諸団体が実行委員会をつくって健康まつりを成功させました。私たちも薬の相談コーナーを出して参加しました。健康まつりやおひな様展に参加する、ささやかな取り組みですが、こうした小さな芽を大事にして、地域の人々に親しまれる薬局になりたいと思います」と薬局長は話す。

電子薬歴の進化

写真 今年の4月から薬価が引き下げられ、今、どの薬局も経営的に非常に厳しい状態にある。薬局が淘汰される時代に入ったとも言われる中で、ちひろ薬局も懸命に挽回をはかっている。

 処方箋枚数は月平均700枚弱、江古田沼袋診療所からの処方箋が8割、2割が他の医療機関からのものだ。

 「処方箋枚数を増やすのが正道なんでしょうが、これだけ医療改悪によって受診抑制がかかる状況では、増やすのは大変です。今、取り組んでいるのは薬剤師としての指導料、技術料を重視することと、薬品管理を徹底すること。これを意識的にやっていくしかないと思っています」と薬局長は言う。

 まず指導料、技術料だが、服薬指導、薬歴管理をきちんとやることは薬剤師本来の仕事をきちんとやるということでもある。その結果、指導加算(インテリジェントフィー)がつく。東医研では業務がよりスムーズになるよう、電子薬歴を取り入れ、患者さんからの訴え、客観的情報、指導内容などを入力し、誰でもすぐに見れるようにしている。処方箋もスキャナーで取り込む。

 さらに今年に入って薬ナビも導入した。薬名を入力すると、効用、副作用、高齢者・妊婦・乳幼児の場合はどうかなど、さまざまな情報があっという間に検索できる。電子薬歴を見つつ、時には薬ナビを利用しながら、窓口の患者さんとお待たせすることなくコミュケーションできる。

 薬品管理も薬ナビを使ってできるようになった。とはいえ、薬を購入するかどうかの判断は人間がする。薬局の薬品管理は想像以上に大変のようだ。

写真
百観音(明治寺の境内)をバックに、常勤スタッフ3人そろって。左から木村実喜子薬剤師、小林薬局長、肥田裕美子薬剤師。このおかに土曜日だけパート薬剤師が入る

 薬の最小単位は100錠だそうだ。たとえばこんな患者さんが来た。「透析の方で血圧が高くなって、ディオバンという降圧剤20ミリが処方されました。20ミリというのはあまり出ないミリ数なので、1回目はその分量だけ近くで買いました。2回目も同じ処方でしたので、ずっと続くかなと判断し、今度は100錠購入しました。そしたら3回目は40ミリに変更になり、そのまま40ミリで継続ということになって、20ミリの残り86錠は不動在庫になってしまったんです」

 東医研では不動在庫を定期的に洗い出し、FAXでやりとりして薬局同士で融通し合っているが、それでも不動在庫は抱え込まないに越したことはない。

 薬は何万種類とあるから、全部を揃えておくわけにはいかない。ジェネリックを使うことで薬品の種類が多くなり、在庫管理が複雑化したこともある。ちひろ薬局には薬600種類あるそうで、それでも少ないほうだという。

 「患者さんが来て、薬がない場合は区の薬剤センターに走って買ってくることもあります。薬がなくては困るけど、でも、値段が高くてさほど出ない薬の場合、来月来る患者さんの分を今月買っておく必要もないわけで、そこが在庫管理で苦労する点です」と薬局長。

 沼袋商店街通りには薬局がいくつもある。最近、ドラッグストアの中にも調剤薬局ができた。だが、薬がないという理由で断る薬局もある。「渋谷区で処方された目薬の患者さんでしたが、地元で処方してもらおうと、駅近くの薬局に行ったんですが断られ、次もその次も断られ、うちに来たという方がいます。うちも在庫がなかったんですが、区の在庫センターで買ってきてお渡ししました。それ以降、この患者さんはずっとうちに来てくださっています」

 たった一人の患者さんだ。断ってしまえば簡単に済むことだが、そうはせずに、一人の患者さんのために手を尽くす。こうした優しさの中にも次への小さな芽が顔をのぞかせる……。



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