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協同組合報vol.39

トピックス 現実を見つつ、未来を描いて
東京民医連青年医師の会 前会長
東葛病院 腎臓内科医長 土谷 良樹

「青年医師の会」の活動

 ――先生は腎臓がご専門だそうですが、そのお話に入る前に、先生が取り組んでおられる活動についてお聞きしたいと思います。この「協同組合報」2004年10月号に、医師という立場から平和を実現していくための世界的な団体である「国際反核医師会議」の世界大会(写真)に参加された様子を寄稿してくださいました。あの活動は今も続けていらっしゃいますか。

写真★はい。ぼくは広島出身ということもあって、平和の問題に関心をもち続けています。この国の形をどうしていくのか、世界の形をどうしていくのか、まさに自分たちの問題です。医療を担う医師という立場で発信し続けたいと思っています。

 ――他に活動していらっしゃることは?

★東京民医連の「青年医師の会」の会長を2期つとめました。「青年医師の会」というのは東京民医連に所属する7年目までの医師が参加する会で、自分たちはどういう医療をやっていくのか、これからの民医連医療をどうつくっていくのかといった課題を、青年医師という立場で集まって議論して深めていくことを目的にしています。
 7年目までの医師が参加と言いましたが、じつは5年目までに変更された時期があるのです。4、5年目の医師と6、7年目の医師とでは要求が違うのではないかということで、それまで7年目までだったものを5年目までに変えたわけです。
 6年目7年目というのは、医療を担う実働部隊という立場になります。医学的にはある程度のことができるようになり、責任をもって診療を行うという立場になる。自分の診療の質をあげることが病院や地域の医療の質をあげることに直結してくる世代です。そういう中で、民医連運動のことや経営、医療現場の抱える問題、研修指導などを担っていかなければならない立場になってきますので、仕事量は増え、かなりのストレスを抱えることになります。
 しかも、外部研修に出るのが5年目以降です。専門の病院や大学病院に行って学び、それを民医連に持ち帰って医療の質を高める。それを担うのが5年目から8年目ぐらいの医師集団です。
 とはいえ、6年目7年目はまだ管理医師ではありません。青年医師ではなく、管理医師でもないとなると、弱い立場に置かれがちになります。医療現場を守らなければいけないということで外部研修にも出にくくなります。そうした弱点を改善するために、青年医師の会の期間を7年目までに戻したのがぼくの会長1期目の仕事でした。

みんなで集まってワイワイ言いつつ

 ――7年目までに戻して正解でしたか?

写真
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上・下ともIPPNW世界大会in北京(2004年9月17〜19日)

★そうだと思います。1年目2年目というのは研修医という枠組みで常勤医の扱いにはなりません。常勤医扱いになるのは3年目からですが、3年目4年目5年目というのは人数が少ないんです。それに、医学的には発展途上の段階で、まだまだ勉強しなければいけないことが山のようにある状態ですから、積極的にものを言うということがじつは非常に難しいんです。ですから、6年目7年目の医師が入って、若い医師と一緒に考えていく。医学的にも到達度をあげ、民医連医療も実践していく。これは非常に重要なことだと思います。
 民医連の研修、民医連の医療はどういうものであるべきなのか。この大きなテーマを青年医師の中で議論をして、理想を描いて追い求めていく。現実を見つつ、未来をつくっていく……。そういう意味では5年目6年目7年目の力というのは非常に大きいと思います。
 民医連というのはある意味特殊な存在です。民医連に所属して民医連医療を実践するというのは非常に意義のあることですが、それが本当の意味でどういうことなのかということを、医者になってから考える機会はじつはとても少ないんです。目の前の医療、目の前の各科の勉強で追いまくられてしまいますから。
 「医学がわからないヤツに何が言えるんだ」という雰囲気が医者の世界には多かれ少なかれありますし、実際その通りですので、一生懸命に勉強するんだけど、われわれは民医連の医療をやっていくのであって、医学のプロということだけではないだろうと。それでは民医連の医療とはどういうもので、どういうふうにそれを学んで身につけていったらいいのか、そして、どういう民医連医療をつくっていきたいのか。こういうことを議論しつつ、つくっていけるのは青年医師の間しかないと思うんですね。

輝いている先輩医師から学ぶ

★そういう意味では、「青年医師の会」は夢とロマンをもって、忙しい中をみんなで集まってワイワイ言いながら勉強会を開いたりするところに醍醐味があります。特に最近は研修医向けにレクチャーを月に1回開いています。現場にいると、民医連と他の医療機関はどこがどう違うのかというのがだんだん見えなくなってきます。そこで、民医連の医療を担ってこられた医師と直接話をしようという企画をつくっています。
 今年5月には大田病院の伊達純先生から「ホームレス患者の医療」についてレクチャーしていただきました。大田病院はホームレスの間で有名な病院だそうです。大田病院のある地域には病院はいっぱいありますが、結局どこも相手にしてくれない。それで「どうしようもなくなったら、大田病院に行け」と知れ渡っているようです。
 ホームレス患者の医療を通して、彼らはなぜホームレスになったのか、人権を守るとはどういうことなのか、社会復帰のためにわれわれは何ができるか――こうした話は民医連ならではです。
 そのほかにも民医連が長年関わってきた「青空裁判」、大気汚染の問題や、アスベスト被害、じん肺の問題について、10年20年と取り組んでこられた先生に話をしていただいたりしています。民医連は他ではやらないことをいっぱいやっていますので、そういう先輩医師の輝いている姿を見せてもらい、民医連医療というものを掘り下げていく機会にしています。

 ――医師でなくても聞いてみたくなるような興味の湧くテーマですね。こういうことを通じて民医連に対する夢やロマンを育てるきっかけにしてもらうということですね。

★放っておけば、民医連の研修医の半分ぐらいはやめていきます。しかも最近はそれがさらに増えてきている現実もあります。なぜやめていくのかについてはさまざまな要因があるでしょうが、2年間という限られた時間の中で、民医連の医療というものをきちんと伝えきれていないということが一番大きい要因じゃないかとぼくは思っています。民医連の医師を志すということは、自分の人生をどう生きるかということです。患者さんに優しい医療をしたいというだけなら、今はそういう病院は他にもあります。地域医療をやりたい、診療所をやりたいということでも、そういう病院も多くなっています。もちろん優しい医療も地域医療も民医連はやっていますが、さらに民医連は、本当に苦しんでいる人たちの最後の助けになろうとする医療機関であり、医療制度や医療そのものを改善していくために国や行政に対してきちんとものを言う集団です。そういう民医連の真髄をどう伝えるか。「青年医師の会」の役割はますます大きくなってきていると考えています。

増え続ける透析患者

 ――それでは先生のご専門の腎臓のお話に移らせていただきます。最近、透析患者さんが増えているという話をよく耳にしますが。

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外来腎臓病教室

★慢性腎臓病というのはなかなか大変な病気で、高齢で糖尿病で腎不全という方が急激に増えてきています。透析患者は年間1・5万人ずつ増え続けて、現在30万人近くになっています。
 腎臓病の管理では、腎不全の進行をできるだけ阻止して透析にならないようにするというのが非常に重要になってくるわけですが、慢性疾患の治療というのは日常生活が治療の場ですから、管理が大変難しいのです。とりわけ腎臓病の治療の一番大きな柱は低たんぱく食事療法であり、これが非常に大変なんです。
 糖尿病の場合はカロリー制限ですが、腎臓病の場合はカロリーは十分に摂ってたんぱく質を制限しなさいという治療です。肉、魚などのたんぱく質を普通の人の3分の1ぐらいに減らさないといけません。いちいち計って計算しないといけないし、お米の中にもたんぱく質が含まれているという、そういうことまできちんと理解して計算しなければいけません。
 食事療法は患者さん自身とご家族が毎日やり続けないと成果が出ませんので、外来診療だけではとうてい無理です。それで、東葛病院では1年ちょっと前から外来腎臓病教室に取り組んでいます。
 実際に料理を作りながら、どういう食事の作り方をすればいいか、どういう食材をどう工夫すればおいしい食事ができるのか、そもそもどうして食事療法をするといいのか、どんなことに気をつければいいのか、今後どうなっていくのか、などをきちんと理解していただいて、患者さん自身が治療の主体者になっていただくわけです。

 ――周囲で糖尿病という話はよく聞きますが、慢性腎臓病という話はほとんど聞いたことがありません。そんなに患者さんが増えているんでしょうか。

★慢性腎臓病というのは自覚症状はほとんどありません。例えば糖尿病と診断された方は、その時点で糖尿病性腎症のステージTというところに分類されます。ですから糖尿病の方は全員、腎障害を持っていることになります。それが腎不全まで進行するかどうかはまた別の問題ですが、腎臓病というのは透析間近になるまで自分は病気ではないと思ってしまう、そこが一番やっかいです。
 流山市は絶対的医療過疎地域で、透析施設を持ち専門科を置いているのは東葛病院しかありません。ですから、他の医療機関からの紹介も多くなっています。
 腎臓内科というのはきわめて総合性の高い医療です。がんなどの病気が見つかった場合でも、専門の治療が始まるからといって腎臓の治療を休むわけにはいきません。われわれがプライマリーにみて、専門科と相談しながら治療を続けていくことになります。透析導入になれば、死を迎えるまでのお付き合いになります。ある意味、究極的な地域医療、全人的医療といえるかもしれません。
 慢性腎臓病はそれ以上悪くならないようにするのがとても大切です。食事療法、水分コントロール、運動・薬物療法などを積極的に取り入れている方は比較的腎機能を維持できています。自己管理のできる方が増えるよう、さらにサポートを強化していきたいと考えています。



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