「このガーゼいくら?」
野田南部訪問看護ステーションそよかぜ 五十嵐きよみ
「え、毎日来てくれるの?」。Aさんと初めてお会いした時、うれしそうに答えてくださいました。Aさんは90歳の女性。直腸がんの皮膚転移とのことで、野田市内のケアマネジャーから「訪問看護に行ってほしい」と相談のあった方でした。
●転移した皮膚がんの処置を自分でやっていた
がんの転移した皮膚の処置をなんとかお一人で行っており、とても大変だったとのこと。Aさんのお子さんは二人で、現在は息子さんと二人暮らしです。ところが息子さんもがんのため気管切開を受けており、余命も短い状態です。幸い息子さんは、身の回りのことや、外出は自立されています。長女さんはアメリカに永住されておりますが、今回一時帰国され、在宅でのサービスを整えるため、この時同席されていました。「毎日でも看護師がうかがえますよ」と訪問看護の説明を行い、料金のことにふれ、1回の訪問看護に約1000円かかることを説明すると「それではとても払えない。週1回にしてください」というのが長女さんの判断でした。Aさんはそれを聞きがっかりされていました。
初回訪問看護時、転移した皮膚がんを見て驚きました。右足の付け根から陰部にかけて、長さ20×5cmほどはあったでしょうか、悪臭のあるただれた肉芽が目にとびこんできました。傷は深く、血の混じった黄色い浸出液が出ており、衣類にまでしみだし、傷に当てられたものはとても清潔とはいえない布でした。ご本人がやっとの思いで白い布を切り、1日に2〜3回取り替えていたのです。右足はむくみ、熱もありました。清潔なガーゼは無く、衛生材料もほとんどありません。
そのような状況でしたので、次回から訪問看護ステーションにあったガーゼや紙おむつ等を持っていき使用していると、訪問のたびに「このガーゼいくらかかるの?」と尋ねられます。何故? どうして? こんな状態で、がん末期の90歳の患者さんが、血と膿の傷をかかえてガーゼも無く、自分で処置しなければならないのか? 私は患者さんを前に茫然となりました。
●医療も介護も満足に受けられないなんて!
「週1回の処置ではとても足りません。1日2〜3回は必要なくらいです」と娘さんにお話ししました。ところが娘さんからは「2人の生活費、医療費がかかるから難しい。やはり週1回にしてほしい」との答えでした。経済的にはAさんと息子さんの年金を合わせて20万円ほど。しかし税金の滞納があり、月8万円は返済に当てているとのこと。Aさんは保険会社の営業でずっと働き続けていたそうです。働いて、働いて、病気になったらお金がないと満足に医療も介護も受けられない。税金、税金と払い続けて、たくさん払った税金はいったいどこへ行ってしまったのか? ケアマネジャーと相談し、身体障害者手帳を申請することにし、週2回の訪問看護で対応となりました。(3級以上に認定されると、医療費の自己負担分が返ってきます。)
週2回でもAさんは、私たちが訪問することを心待ちにしてくれました。徐々に足のむくみは少なくなり、傷もきれいになってきましたが、先日高熱を出され入院となりました。家で暮らし、息子さんのそばにいたかったAさん。死が間近に迫っている患者さんが、お金と税金を心配しなければならない現実に怒りがこみ上げてきました。
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