褥創が治った!
わかくさ訪問看護ステーション 看護師 中野武彦
「高齢で寝たきり…家族が主に介護していたようだが、床ずれ(褥創)ができている」というケースがこのところ増えています。加齢と共に機能低下が進み、介護の手が十分でなく寝たきりとなってしまった方にとって、褥創の有無は大きな課題です。
●大きな褥創から悪臭が
82歳の女性(Mさん)ですが、古い大きな農家で生活をされていた方がいらっしゃいます。長男さんと二人暮らしですが、その長男さんは日中、農作業に出かけ、母親のMさんの介護は十分できないまま過ごされていたようです。冬の間、脱水状態で入院となってしまい、仙骨部に褥創ができそのまま退院。退院後はラップ貼付と洗浄を行っていたのですが、一向に改善がみられず、訪問看護の依頼を受けました。
初回訪問時、農家の裏庭から部屋に入ると、陽が当たらない室内に悪臭が充満し、布団の横に飼い猫が寄り沿っていて、Mさんは寂しそうに身体を丸めていました。褥創をみると、壊死した部分が深くえぐれ、5pほどポケット状になっていて、それが悪臭の源でした。
Mさんは、畳の上の布団で寝かせられきり。食事は近所に住む次男さんが、コンビニで弁当、おにぎり等を買い置いておき、それをヘルパーの介助で朝・夕、召し上がっているという状況でした。関節拘縮があり、体位交換を嫌がり、ケアの際「痛いよ〜何をするんだっぺ〜」と大声を上げ苦痛を訴えていました。保清が十分でなく、やまんばのように髪の毛も伸び放題。週末はヘルパーが入らず、月曜日の朝はオムツの汚染がひどい状態でした。長男さん自身も精神的問題をかかえ、介護に関われない状況で療養環境改善には大きな困難がありました。
●笑顔が戻った!
私たちは、ケアマネと連絡をとりあい、ベッド、エアマット使用の必要性を御家族に説明することから始めました。ベッド使用は転落の危険があるとの御家族の意見でしたので、畳の上にエアマットを敷き、両脇に転落防止のため布団を置くことで対応しました。
また、往診の医師を探し、相談に伺って、処置方法を検討しました。不良肉芽と浸出液が多かったので、とにかく多量の水道水で洗浄すること、ラップは使わず、尿とりパットを利用し浸出液を吸収させ、1日3回洗浄を行うこととしました。往診時に、壊死部分をカットし、御家族とも連絡をとり受診もできました。栄養補助剤の処方もあり、Mさんの褥創は、内側からだんだんと薄ピンク色の肉芽が盛り上がってきて、悪臭も少なくなり、訪問のたびに小さくなるのがわかるほどでした。
週末にはデイサービスで入浴もでき、多くの人との関わりが増えるにつれて笑顔もみられています。Mさんは受診の際、音楽を聞いている表情が伺えたので、御家族にラジオの設置を相談したところ、すぐに準備してくれました。
褥創の有無は、介護・看護の質を図る「ものさし」だと言われていますが、Mさんに最適な療養を考え、必要なことを整えることで、褥創のケアができ改善に向かいました。なにより、Mさんに笑顔が見られ、食事の後「おいしかった」と、食事を味わい楽しむ気持ちが取り戻せ、日中座ってラジオを聴いている姿は、最初のMさんからは想像もできないほどの変化です。私たち訪問看護師の喜び、やりがいにつながるものです。
その後、ヘルパーステーションから、同様の褥創患者さんの紹介がありました。地域には訪問看護を受けていなくて、褥創等に苦しんでいる方々が多いことを実感しています。地域の中でネットワークを拡げながら、他事業所との連携を深め、訪問看護ステーションの役割を発揮していきたいと思っています。
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