協同組合医療と福祉 ゆたかな医療・介護・福祉をこのまちに medical&welfare
HOME BACK
協同組合法vol.36

事業所を訪ねる(35)
(株)東京医療問題研究所 青葉調剤薬局

調剤薬局ならではの「安全・安心」を追求


リニューアル効果

 (株)東京医療問題研究所(東医研)が経営する8つの保険薬局の中で、開局第1号が青葉調剤薬局(以下「青葉」)だ。1983年7月、中野共立病院向かいの東医研ビル1階にオープンした。

 中に入ると、木の受付台の柔らかな曲線がまず目に入る。その向こうの、渡薬口のついたても曲線でできており、これらの曲線と待合室のいすの淡いピンクとがうまく調和し、落ち着きのある空間を作っている。去年の秋にリニューアルしたばかりだそうだ。

 このリニューアルのきっかけだが、東医研では当初、中野共立病院の移転による建て替えを想定して、「青葉」の移転も視野に入れ、02年8月、中野共立診療所の隣にくるみ薬局を開局した。ところが病院は現地での建て替えとなり、「青葉」の移転も白紙に戻った。となると、近くに2つの薬局を開けているのは、薬品の管理面からも経営面からもリスクが大きい。そこで、「くるみ」を閉鎖して「青葉」に1本化し、それを機にリニューアルすることにしたのだ。

 「以前は前面がコンクリートだったため、外からは見えず、『ここって何?』という感じでした。また、自然光が入らなかったので、室内が暗かったんです。それで、前面をガラス張りにして、照明も工夫しました。明るくなって、評判いいですよ」と築地優子薬局長は説明する。

 薬局は規模が大きくなればなるほど、「待ち時間をいかに短縮するか」が課題になる。「青葉」では待ち時間短縮のために、渡薬口を3つから5つに増やした。

 「さらにもう一つ、受付→待合室→渡薬口→会計という動線をすっきりさせ、患者さんがスムーズに動けるようにした点も今回のリニューアルの大きな特徴です」と小野沢永介事務主任は話す。動線がごちゃごちゃしていると、患者さんに余計なストレスがかかり、「待たされている」というイメージが強まるのだそうだ。

 「これで『待ち時間が長い』という苦情はかなり減りました。待合室も明るくなって、患者さんに満足してもらえる空間になったと思います」と小野沢さんは言う。リニューアル効果は大きいようだ。

いすの配置で「見る」「見えない」を演出

 工夫した点は他にも多々ある。わかりやすいように箇条書きで紹介しよう。

(1)プライバシー保護のために、渡薬口についたてを立てた。この1枚の板があるだけで、声の聞こえ方が相当違うそうだ。

(2)受付の隣に相談コーナーを設けた。

(3)車いすの人が利用しやすいように、玄関をスロープにし、通路も広くとった。また、中に入るのが困難な方には、受付右側の相談コーナーで薬を受け取れるようにした。

(4)番号表示機を外からでも見える位置に設置。

(5)待合室のいすの向きを工夫した。番号表示機を薬局の奥に設置し、それに向かって座るように配置した。これによって外からは患者さんの背中しか見えず、プライバシーが保護される。一方渡薬口に対しては横向きに座る形になり、渡薬口に立つ患者さんが待合室で待つ患者さんの視線を背中に感じなくてすむようにした。いすの配置で「見る」「見えない」をじつにうまく演出しているのだ。

有効で安全な薬を出すために

 副作用のない薬はないと言われるが、「薬を出す以上は、患者さんにとって有効で安全であるための努力をするのが私たちの責務です」と薬局長は言う。そのためにまず重視していることは、患者さんから服薬状況、効果などをきちんと聞き取り、カルテに書き、薬が適正に使われるように援助することだ。

 中野共立診療所の場合は健友会の薬事委員会の決定に基づいた薬を使うが、他の医療機関からの処方箋には、安全性が確認されていないために安易に使えない新薬が処方されていることもある。また、内科と皮膚科という具合に複数の病院から薬が出ていて飲み合わせを考慮する必要がある場合もある。疑問や不明な点は、必ず医療機関に問い合わせる。中には「細かい問い合わせが多くてうるさい」などの意見も聞かれるが、すべては患者さんの安全のためにやっていることなのだ。

 また、調剤のミストラブルを防ぐための努力も怠らない。たとえば、利尿剤のラシックスには20ミリと40ミリがあるが、このように一つの薬で内容量の違う種類があるという場合はミストラブルが起きやすい。

 「そういう場合には、薬の所在が隣同士だと取り違えが起きやすいので、意識的に棚を離しておきます。反対に、わざと同じ箱に入れて、箱の上にビニールのカーテンを付け、そこに大きく『20ミリ』『40ミリ』と書いて注意を喚起するという方法も取っています」と薬局長。

 それでも万が一、ミストラブルが起きた場合は、患者さん、または家族に経過を報告、謝罪し、同じミスを防ぐためにきちんと報告書をあげ、情報を公開して共有する。また、朝会を毎朝開いて、その席上で報告をするほか、定期的に会議を開いている。

 「人数が多いと、一つひとつの決まりごとを全員できっちり守っていくということが崩れやすくなるんです。崩れやすいということを前提にして、常に注意を心がけています」と薬局長は強調する。

対応する医療機関は110ある

 「青葉」のスタッフは、薬剤師の常勤が10人、パートが2人、事務は常勤が3人、派遣が1人という構成だ。処方箋枚数は月に4200枚、1日平均180枚〜200枚。

 うち中野共立診療所からの処方箋が90%をしめ、あとの10%が他の医療機関からのものだ。いうまでもなく中野共立診療所の処方箋が圧倒的だが、ここで注目してほしいのは10%のほうだ。比率は低いが、対応する医療機関は約110あるという。しかも埼玉県や千葉県など東京以外の医療機関もけっこうあるそうだ。中野区に勤務する人が自分の住んでいる地域で医者にかかり、その処方箋を持ってくるためだ。

 「医療機関が多いと、薬品管理が大変です。しかも薬の種類は非常に多く、病院によって採用する薬も違うので、1つの成分につき複数在庫しています。それでも在庫していない薬が処方されている場合は、近隣の薬局に買いに走ったり、問屋に至急で発注したりします。また、緊急性のあるもの、1〜2日あとでもいいもの、いろいろありますので、患者さんと相談して取り寄せてお届けしたり、郵送したりしています。そういう細々とした業務がけっこうあって、それを適正に行わないと、患者さんとの信頼関係も損なわれてしまいます」と薬局長は話す。

 薬っていったい何種類あるんだろう、と薬局長でさえ思うそうだから、薬の安全と一口に言うけれど、それがいかに大変なことか……。

 「患者さんの安全のために努力を重ねているところがドラッグストアと違う点だと思います。今後も、『ドラッグストアより値段は少し高いけれど、安心があるから』と患者さんに信頼される薬局でありたいですね」と小野沢さん。「青葉」は薬剤師と事務の協力関係がいいそうで、「その関係を大事にしてお互いに意見を出し合い、さらに安全・安心を追求していきたい」と2人は話している。



前号へ    次号へ
Copyright(c)2003 medical & welfare All rights reserved.