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協同組合法vol.35

誰のための医療「改革」なのだろう? ――2・9国民大集会、そしてさらに運動を広げていくために

★参加者(あいうえお順)
関   智子 (新松戸診療所・事務長)
根本  賢治 (みさと協立病院・作業療法士)
藤島百合子 (クリニック千駄ヶ谷・看護師)
松井   薫 (東葛病院・看護師)
 司会/前林茂雄(東京勤医会組織部長)

2・9国民大集会に参加して

【司会】昨年の介護保険改悪、障害者自立支援法に続き、今国会では高齢者の負担を2倍、3倍にし、保険のきかない医療を拡大する医療改悪法案が提出されました。さらに、医療の質の低下を招き、医療機関の経営を直撃する診療報酬の改定も重大です。まさに『命の沙汰も金次第か』と言われるような方向に進んでいます。

 2月9日、さいたまスーパーアリーナで「許すな! 医療改悪・大増税 2・9国民大集会」が行われ、全国各地から1万4000人が参加しました。東京勤医会からもバス8台、440人がかけつけました。今日は集会に参加した皆さんに出席していただき、参加しての感想、医療の現場で何が起きているのか、医療改悪を許さないために何をしたらいいか、などを語っていただきたいと思います。今回は集会直後の急きょの座談会ということもあって、東京勤医会の職員だけにお集まりいただいたことをあらかじめお断りしておきます。

 ではまず、集会に参加しての感想から。関さん、いかがですか。

【関】この間、民医連では医療改悪に反対するさまざまな運動を進めてきました。講師養成の取り組みもその一つで、私も「今こそ語っていかなければ」と考え、その養成講座に参加し、地域の人たちに「どこでも呼んでください。どんな小さな集まりでもいいです」と声をかけてきました。松戸市に「老人医療と福祉を守る会」という会があって、忘年会に呼ばれ、語ってきました。また1月29日、松戸の社保協で学習会を開きました。こうしたさまざまな活動の延長線上に2・9集会が取り組まれたと考えています。

 集会に初めて参加した患者さんは「みんなが集まると、すごい集会になるんだね!」と驚き、すぐに署名用紙をいっぱいにして届けてくれました。また、さきほどの「老人医療と福祉を守る会」は、「署名用紙を150枚ください」と言ってきました。枚数の多さにびっくりしていると、「会報にはさんで全員に配ります」ということでした。今、こうした取り組みが広がっています。

【松井】日本の行く末が不安でしょうがないです。このまま手をこまねいていたら、お金がなくて医療を受けられない人がどんどん増えてしまう。これ以上医療改悪が進んだら、大変なことになっちゃうというのが現場の実感です。昨年5月に国会要請行動に参加したんですが、自民党の議員秘書に怒鳴りつけられました。「あんたたち、患者のいのちがどうこうとえらそうなことを言うけど、働く気のない人が多すぎるんだ!」と。この国の政治はイカレている、このままでは日本は壊れると感じて、いろいろな集まりで訴えてきました。

 新卒の看護師さんと一緒に集会に参加したんですが、「私たちが患者さんを守らなければいけないんだと思った」という感想を語ってくれました。

【藤島】予防医療をきちんとやれば医療費は減るということが証明されているにもかかわらず、財政悪化を理由に負担を押しつけてくる。この法案が通ると、ますます病院にかかりにくくなり、病状悪化、重症化してからの受診になります。国民にとって命にかかわる大切な法案であるにもかかわらず、マスコミはさらっと報道するのみで、2・9大集会にしてもほとんど報道されませんでした。私たちの力でもっと多くの人に知らせていかなくてはいけないと、集会に参加してさらに強く感じました。

【根本】今、『下流社会』という本が売れているように、「格差社会」が確実に出現してきています。とりわけ所得の格差によって受けられる医療に格差が生じるというのはどう考えてもおかしいです。現役世代だけでは高齢者を支えられないから、高齢者にも負担してもらう、それが不公平をなくすための改革だという流れは、現役世代と高齢者を対立させ分断させ、それを利用して進めるものです。「痛みを伴う改革」と小泉自民党は言いますが、言葉のまやかしに気をつけたいと思います。

【司会】医療費の本人負担が2割から3割へ、老人医療費の定率負担へ、という医療改悪が出された2002年も、さいたまスーパーアリーナで大集会が開かれました。あの集会がのろしになって、毎週のように国会に行ったりして、かなり追い詰めました。結局、国会を延長してギリギリで通したという状況でした。全国各地から集まった人たちが確信を持って帰り、先頭に立って運動の輪を広げていくことが急務です。

病気になっても患者になれない実態

【司会】格差拡大という話がありましたが、新聞の世論調査によると、「貧富の格差が広がっていると思う」と答えた人が7割に達しています。雇用では二人に一人が非正規雇用です。収入では300万円以下が4割近くを占めている。それでなおかつ社会保障がどんどん後退していき、病気になっても医者にかかれないという状況が広がっています。最近の調査では、国保料が払えない人が470万人、保険証を取り上げられて資格証明書を発行された人が30万人います。最近の新聞によると、保険証を取り上げられて医者にかかれなくて亡くなった方が、わかっただけでも18人います。本当に深刻な状況です。医療現場で患者さんの実態はどうなっているのか。みなさんの職場での実態を出していただきたいと思います。

【松井】去年8月、保険証がなくて心筋梗塞になった方が東葛病院に入院してきたんですが、「入院費が払えないから帰る」と退院してしまいました。連絡をとって、「生保申請のお手伝いもしますから、治療をしましょう」と話し、生保が受給できるような支援もしてきました。今は心臓カテーテルの治療も受けて、笑顔が戻っています。民商の人たちも経営が苦しく、自ら命を絶った人もいるようです。それを聞いたとき、悔しくて……。弱い者いじめをする社会制度を何とかしなくちゃ、と職場会議でも話し合っています。

【関】個人事業者の消費税の課税対象売上高が3000万円から1000万円に引き下げられましたから、民商などに加盟している事業者は大変です。さらに、老年者控除50万円が今年から廃止されました。年金200万円のうち50万円は控除対象だったのに、それがはずされるとどうなるか。介護保険料も国保料も上がるんです。しかも年金自体が昨年からすでに減らされている。収入は減ったのに課税額が増えてさらに収入減という、ものすごい負荷がかかっています。

 これは医療費値上げの前に、ものすごい深刻な状態があるということです。新松戸診療所では03年から「いのちと暮らしのアンケート」をとりはじめ、04年、05年と調査を重ねてきました。患者さんがどんな思いで診療所に来ているのかを知らないと外に向かって発信できません。しかし、生活が苦しいということを恥ずかしくて言葉にできずにいる患者さんも大勢います。貧困はもっと進むでしょう。じゃあ私たちに何ができるだろうか。枠を超えて患者さんと真剣に向き合っていく、その方法を私たちは持たなければいけないと考え、その一つとしてアンケートを始めたわけです。

【藤島】往診患者さんで介護度5の方ですが、収入が少し増えたために障害医療証がもらえなくなり、自己負担が1割から2割になりました。毎週往診していたのですが、「医療費がかさむので、月2回にしてほしい」という申し出がありました。もう一人、女性の障害者で生保の方ですが、今までは支援費制度のほうからヘルパーが派遣されていたのが介護保険の対象の年齢になりました。介護保険になったらヘルパーさんの回数が減ってしまったのです。社会保障制度全体が矛盾だらけです。

【根本】みさと協立病院には長期入院の方がかなりいます。退院したくても退院できない方もいて、自分の存在の意味を失いかけている方もいます。私の担当している患者さんの一人は東葛病院に入院していた方で、度重なる脳梗塞で、担当医に「死なせてください」と言ったそうです。その担当医は「医者は命を助けたいと思って頑張っているんです」と懸命に話したそうです。冗談まじりに「死ぬ薬はないの?」と言う方もいます。そういう高齢者に追い討ちをかけるような医療改悪は許せません。

【関】「ポックリ死にたい」という言葉を聞かない日はないぐらいです。同じぐらいの年齢の方が2、3人集まると、朝から「ポックリ死ねるといいね」。悲しいかな、これが日本の高齢者の現実です。

受療権を守る闘い

【司会】私たちは民医連の職員として、命は平等である、差別は許さないということで運動を進めているわけですが、同時に、実際に医療にかかれなくて困っている人たちに対して、どうしたらいいのかを一緒に考え働きかけていくことを実践しています。民医連では「人権のアンテナの感度を高めていく」として「一職場一事例活動」を呼びかけ、受療権を守る闘いを提起しています。

 それぞれの職場で、受療権を守るためにどんな取り組みをしているか、紹介してください。

【関】松戸市では国保の減免条例がなかったのですが、2005年度にようやく条例ができました。私たちは「国保をよくする会」で松戸市に2003年度から減免申請をする取り組みを行ってきたわけですが、条例ができた背景にはこうしたことが大きく影響していると思います。

 減免申請を行った男性の事例を紹介します。この男性は板金工でしたが、借金の保証人になって自己破産が認められた方で、ある日、脳梗塞を起こしてしまいました。約30万円の国保料の請求が来ましたが、本人は病気で働けず、奥さんは皿洗いのパートで月に8万円を何とか稼いでいる状況でしたので、とてものこと払える金額ではありません。国保料の督促は自己破産した人に対してもやってきます。払わないと十数パーセントの延滞利息がつきます。

 減免申請をしても松戸市には条例がありませんでしたので、当然却下されます。市町村で却下された場合には県に不服申し立てができますので、私たちは県の国保審査会に不服申し立てを行いました。結局却下になりましたが、減免申請や不服申し立てといった手続きをとるために私たちは必死で勉強し、粘り強い活動をしてきました。

【松井】 私たちは今、「看護師増やせ」の運動に取り組んでいて、積極的に患者さんにも署名をお願いしています。

 去年、新人看護師が大量にやめていくということが社会現象になりました。その背景には医療ミスがあり、「こんな過密労働では私だっていつミスを犯すかわからない。明日はわが身」という思いがどの看護師にもあるのです。理想を抱いて看護師になっても、現実のあまりの過密労働、そこへ医療ミスのバッシングですから、若い看護師には耐え切れません。

【根本】みさと協立病院では障害者自立支援法の中で精神障害者の通院医療費公費負担制度(32条)が廃止になるという問題で、玄関に「相談コーナー」をもうけて、スタッフが交代で病院全体で相談活動、署名活動に取り組んでいます。友の会も一緒に活動しています。民医連ならではの取り組みだなと思います。

【司会】署名は2002年のときは民医連や医師会など全体で3000万筆集めました。今回はそれ以上の取り組みにしようということで、民医連全体では450万筆の署名を集めようと提起されています。勤医会では職員一人50筆という目標を掲げています。「署名は無駄なんじゃないか」という雰囲気もありますが、数が力になることは確かですし、署名をもらうために対話する、そして自主的に名前を書いてもらうという行為には大きな意味があります。大いに職場や地域で広げていきましょう。

 それから、私たちだけで固まってやるのではなく、地域の人々や医師会などにも大いに働きかけていくことが重要です。


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