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協同組合法vol.34

トピックス/さらに一歩すすめる絶好のチャンス!――念願の1階に移ってリニューアルすることになった

所長     梅津  仁
看護師長 二瓶 幸江
事務長 長谷川恵子
看護師
(ケアマネ兼任)
浅子 一江
事務 片山 輝彦

チャンスは偶然に

 ――外苑診療所に以前取材で伺ったとき、「うちは2階というデメリットがある」とおっしゃっていましたが、このたび、1階に移ることが決まったそうですね。

【長谷川】そうなんです。偶然1階が空きまして、この4月にリニューアルオープンの予定です。2階だとどうしても不便で、「いつかは移りたいね」という話はよくしていたんですが、都心では新しい場所を探すといっても非常に困難ですからね、ラッキーでした。

【二瓶】高齢者の方は私たちが想像する以上に階段が大変なんです。

【片山】安全のために受付にモニターをつけて、階段を上がってくる患者さんの様子がわかるようにしています。杖をついた患者さんや、手すりにつかまってやっと上がってこられる患者さんもいますし、ベビーカーと赤ちゃんの両方を抱えたお母さんもいます。気づけば下りていって手助けするようにしていますが、そういう方にとっては階段を使わなくてもよくなるというのは大きな変化です。車いすの方など、「あの階段がね……」と二の足を踏んでいた方にも来てもらえるようにして、さらに「かかりやすい診療所」にしようとみんなで話し合っています。

【長谷川】費用としては約2200万必要です。しかもここよりも狭くなりますので工夫が必要ですが、1階に移れるということは絶好の機会だと思っています。

半世紀余の歴史を大事にしつつ

 ――外苑診療所が設立されたのは1950年、半世紀以上の歴史をもつ、勤医会で一番古い診療所ですね

【長谷川】はい。ここに移ってきてからでも、この1月で早や20年になります。外来を中心にしながら、在宅、保健予防活動、介護保険対応の活動ということでやってきています。
 「診療所の今」を数字で説明しますと、患者件数は1ヶ月約550件、半日の来院患者数は40〜50人です。在宅は月平均35件、健診は区民健診を中心に月に50〜55件です。
 地域別では、診療所のある神宮前2丁目に住む方が4割以上を占めています。年齢別では、20歳〜59歳の働く現役世代が4割、70歳以上の高齢者がこれまた4割です。この地域の職場で働いている人たちと、古くから住んでいるお年寄りと、新旧入り混じっているという点もここの大きな特徴といえます。

【片山】それから、うちは新患が多いのも特徴だと思います。若い人たちもけっこう来院されます。この地域はアパレル関係や建築設計事務所など小規模の事業所が多く、そこで働く20代〜30代の方が多いです。

【長谷川】医療の中身でいうと、民医連では今あらためて慢性疾患医療の取り組みを強めようと提起していますが、所長から、「慢性疾患だけでなく、ずっと通い続けている人たちの全身チェックをしていきましょう」という提案がされ、それを受けて今年度は「疾患だけでみるのではなくて、来てくれる人全てを対象に全身をみていこう」という医療目標を掲げてやってきました。エコーなど一定の検査項目を決めて、きちんとお誘いをしてというふうにしながら取り組んでいます。

 ――それは患者さんにとって心強いでしょうね。歴史が古いだけに長くかかっておられる患者さんもいらっしゃるかと思いますが、一番長い方は?

【浅子】この診療所をつくる運動をされたという方たちもいらっしゃいますから、50年以上通い続けてくださっていることになります。そういう方たちが「おとめ会」という会をつくり、支えてきてくださったのです。

【二瓶】戦後の「生活と健康を守る」運動をやってきた方たちで、80代、90代の方たちが何人もいらっしゃいます。

【長谷川】共同組織で言えば、「代々木病院友の会神宮前班」という班はありますが、診療所単独の友の会はないんです。共同組織を直接は持っていないというところでは、何をやるにしても、企画、準備、運営と全て職員がやらなければいけませんので、大変な部分もあるし、広がりにくいという面もあります。これは大きな課題です。それでもやってこれたというところがまた不思議なんですが。
 経営的にもずっと黒字で、安定した経営をやってきたというのはすごいことだなと思います。言い換えれば、代々木病院があるから、やってこれたということです。

【浅子】代々木病院があるという安心感は非常に大きいです。在宅は診療所で責任をもち、何かあったら代々木病院へ、ということでやっています。

雨の日も風の日も雪の日も自転車で

【二瓶】自転車で訪問診療、往診をしているという点もぜひ紹介したいうちの特徴です。雨の日も風の日も雪の日も自転車で出かけていきます。今はどこでもほとんど往診車になって、自転車というのは珍しいんじゃないでしょうか。このあたりは竹下通りや表参道といった華やかな通りがあっていつも賑わっていますが、その人ごみをかき分けるようにして走ります。
 自転車は春や秋のお天気のいい日は気持ちいいですが、悪い日はもう大変です。先日も雨の中を出かけていき、びしょぬれになってしまい、訪問先で靴下を脱いで裸足であがらせていただきました。

【長谷川】うちの所長は40代の若い所長ですから、そういうこともできるんだなと。

【浅子】先生の人柄もあると思うんですが、患者さんが言いたいことを言える、そういう診療所じゃないかと思います。たとえば薬でも、「これはこういう理由で飲みたくない」と患者さんがはっきり言います。

【長谷川】受付で電話をとると、「今日は梅ちゃんの日?」(笑)なんて言う患者さんもいます。患者さん同士で「梅ちゃん」と言っているんじゃないでしょうか。それだけきさくに話しかけられる先生なんだと思います。

 ――所長は診療所の医療についてどうお考えでしょうか?

【梅津】ここに来てかれこれ6年になります。同じ患者さんを何年もみていると、年齢的な変化、病気の変化といったものをじっくりみることができます。もともと私が民医連に入ったのは、昔の開業医のように患者さんを長くみたいという思いがあったからです。そういう意味では、私がやりたい医療をある程度やらせてもらっているのかなと思っています。
 ただし、今、非常に難しいのは、「医療の質」をどうするかということです。今の医療をこのまま続けていっていいのか、つまり、昔のお医者さんのように、全ての病気を一人の医者がみるということを続けていっていいのかどうか。医療技術は日進月歩で、全部をみれるだけの最新の医療知識・技術を獲得していくというのはとても難しいことです。さらに、薬を例にとると、副作用のことなどもきちんと説明しなければいけません。そういう説明義務も昔に比べて厳しくなっています。それをきちんとやろうとすると、今の患者さんの数はこなすことができないという矛盾があります。
 理想としては、予約制にして、ある程度時間をかけてみるのがいいんでしょうが。そうすれば私も話したいことが話せるし、患者さんも聞きたいことが聞け、丁寧な医療ができます。しかしながら、難しい問題もあります。理想と現実の狭間で、どうやって折り合いをつけていくか、ということなんでしょうね。

開かれた診療所として

 ――それでは今年の抱負をひとことずつお願いします。

【浅子】私はケアマネも担当していて、ケアプランは現在16件です。介護保険がどんどん削られてきて、「利用者のために」という視点が置き忘れられています。ケアマネの仕事も大変になってきていて、なおかつ病気の管理などもどんどん厳しくなってきて、「大変」というのが今の正直な気持ちです。そこをどうしたらいいか、今、考えているところです。

【二瓶】1階に下りるということで、今まで以上に患者さんの要求に応えていきたいということと、今まで診療所に来られなかった方にも来てもらえるような工夫が必要だと思っています。患者さんとして来ていただくだけでなく、健康や認知症の問題など、地域の方たちと一緒に何かできたらいいなと考えています。

【梅津】医療を存続させていくためには、所長として経営に責任をもってやっていかなければと考えています。1階に移れば家賃は上がるし、改装費用もかかります。予算をきちんと立てて、予算どおりに「一生懸命働く」(笑)。

【長谷川】医療福祉宣言で「気軽にかかり続けられる診療所にします」と決意したように、私たちは「かかり続けられる」にこだわってやってきました。そのためにも、1階に下りるのは、今までやってきたことをさらに一歩すすめるチャンスだと思っています。所長も言いましたように、存続し続けられるように経営のところできちんと責任をもってやっていく、そのためにも私たち自身がもっと地域の中に入っていって、これまでの診療所の顔と違う顔というかな、そういう新しいものを出していけたらと思っています。

【片山】ここは人の行き来が多いところで、1階に下りると、通りから中が見えるようになりますから、文字通り、「開かれた診療所」として頑張っていきたいと思います。それから、今まで以上に健診や予防活動などの広報活動もしていかないといけないと思っています。リニューアルを機に新たな気持ちで頑張っていきたいと考えています。



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