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協同組合法vol.32

事業所を訪ねる(31)
医療法人社団 健友会 江古田沼袋診療所

黒字が計上できる診療所へ


「頼む、晴れてくれ!」

 江古田沼袋診療所の職員たちと「ぬましん友の会」の役員たちは11月20日(日)の天候が気になってしかたがなかった。診療所として初めての取り組みとなる「福祉と健康まつり」を開催する大事な日なのだ。「健康まつりは天気次第だからね」「週間予報によると、晴れるらしいよ」。寄ると触ると天候の話になった。
 これまで健友会は、健康まつりを院所単位ではなく全体で行ってきた。しかし、それもこの10年ほど中断していた。久々のお祭り、しかも初めての診療所での開催。さらに、地域の様々な団体と手を結び、実行委員会を積み重ねてきたのだから、職員たちの入れ込みようは大変なものだった。健友会の他の院所からも熱い期待が寄せられていた。
 20日当日。抜けるような青空が広がった。「よし、やった!」。職員も実行委員も思わず顔がほころぶ。健康まつり開催の意気込みを橋詰事務長はこう語る。
 「診療所は今、経営的に非常に厳しい状況にあります。昨年は1500万の赤字、今年はすでに1160万の赤字です。病院建設が成功するよう、東京勤医会はじめ東京民医連の全面支援をいただいている中で、赤字を毎月120万も計上しつづけることは許されることではありません。それをどう改善していったらいいのかと職員は懸命に模索しているところなんですが、やっぱり地域の方々との結びつきの中で展望を切り開いていくしか道はないと思っています。そういう意味で今回の健康まつりは、診療所の『可能性』をかけた取り組みだったんです」
 当日は秋天のもと、300人を超える人々が集まって、狭い路地は人で埋まった。小規模、いかにも手作りらしいお祭りの賑わいが写真から伝わってくる。

新しい芽を出したい

 江古田沼袋診療所は歴史と伝統のある診療所だ。一九五〇年に開設され、地域住民運動の拠点的な役割を担ってきた。翌51年には「江古田・沼袋生活と健康を守る会」が結成され、全国の守る会運動の先駆けとなった。当時、「輪タク」という乗り物があった。自転車の後ろ、あるいは横に箱型の客席を設けた営業用の乗り物である。1952年、中野駅で客待ちをしていた「輪タク」の所有者にかけあって承諾を得、輪タクでの往診が始まったという。「輪タクのうしろに沼袋診の看板をつけて往診が始まり、急な坂道では、中川先生が後押しするなど地域の名物となった」(「中野勤医協の50年」より)
 さらに小児マヒ闘争などの献身的な運動も繰り広げ、診療所は常に地域の人々とともに在った。
 85年に所長に着任し、以降05年まで20年の長きにわたって所長をつとめてきた坂本博前所長は述懐する。
 「今は底をついたかなという状況ですが、『中野勤医協の牽引車』と言われた時期もあったんです。90年代前半の頃です。老人医療費が無料の時代で外来は混み合い、物療のマッサージも賑わいを見せていました。これはうちのドル箱でしたね。それで91年に2階の旧レントゲン室を物療室に改修、その他にも97年頃までいろいろ改修工事を行いました」
 牽引車だった当時と今とでは何が違うかというと、「やっぱり外来患者さんがガタ減りしたことです」と坂本前所長。現在は月平均430件、最高時の頃は月平均590〜600件、その減り方は一目瞭然だ。
 「通りから奥まっているから、立地条件が悪い」という声もあるが、「新患件数は月平均17件ぐらいで、法人内の通りに面した診療所と比較しても大きな差はないので、それは絶対的な理由にはならないと思います」と事務長は言う。
 「むしろ、診療所の成り立ちを見れば、江古田、沼袋は地域運動の歴史をもつ地域です。民医連で『地域との乖離』という問題が指摘されていますが、うちの場合は、力と伝統のある地域の諸組織と乖離してしまっていたことに最大の問題があると思っているんです」
 そこで健康まつりに取り組み、新しい芽を出したいと考えたのだという。実行委員会には診療所と友の会をはじめ、計8団体が参加。障害者の作業所、訪問介護事業所など、今回からお付き合いが始まった団体もある。

さらなる可能性を信じて

 「じつはうちの診療所は今、注目されているんですよ。最近の特徴といえば、これですね」と、11月7日から所長になったばかりの川村直(すなお)所長は話す。健友会友の会の「会員拡大月間」では、9つある各診療所の友の会の目標を40世帯と決めた(共立友の会のみ180世帯)。その40世帯をぬましん友の会がダントツ一番乗りで突破したのだ。ニュースには「ぬましん友の会から学ぼう!」と大見出しがつけられ、「ぬましん友の会が全体の牽引車になっていることが今年の特徴」と書かれている。
 このままではいけない、と危機感を抱いた友の会と職員は、健康まつりのお誘いをしながら、諸団体など外に向けて声をかけていった。短期間で40世帯を獲得するのは並大抵ではないはずだ。どれほど必死になったか、目に浮かぶようだ。「外の人たちと力を合わせれば、可能性は広がるということでしょうね」と所長は言う。
 常勤スタッフは医師1名、看護師2名(うち1名はケアマネ専任)、マッサージ師1名、事務2名だ。外来件数以外の医療活動を概括すると、往診は23、ケアプランは54(二つとも月平均件数)、区民健診は年間580件、個人タクシー検診が年間250件。
 「外来の75%が慢性疾患患者さんです。それを考えると、医療機器稼動、検査数が十分とは言えません。今年も進行がんが発見されました。非常勤医の専門の力もお借りし、全身管理、慢患管理をしっかり行う必要があります。それから、しばらく中断している、在宅・気になる患者さんのカンファレンスを再開したい」と加瀬看護師長は話す。
 まずは現状の医療活動に見合った職員体制の確立をめざしながら、医療活動の中身をさらに充実させ、外来1日40名弱を1日でも早く克服したい。そして、今回の健康まつりや友の会拡大に寄せられたエネルギーを大事にして、さらに地域とのつながりを深く大きくして、赤字体質にさよならする構造をつくりたい……。沼診は今、大きく変わろうとしている。



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