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協同組合法vol.31

事業所を訪ねる(30)
医療法人社団 健友会 天沼診療所

今は大きな転換期。
明日に向けてどう方策を立てるか



診療所のリニューアルオープン

 まず下の写真を見てほしい。ひっきりなしに人が行きかっている様子が写っている。右の女性の頭の上に「天沼」という文字が見えるが、これが天沼診療所の看板だ。この通りは教会通り商店街といい、高原照夫事務長によれば、1日の往来がなんと5000人と言われている。
 「JR荻窪駅から徒歩3分という地の利で、この往来でしょ。ここに引っ越してからは宣伝費は全くかけていません。本当に恵まれた場所を見つけることができてラッキーでした」
 天沼診療所が約300メートル離れた所からここに越してリニューアルオープンしたのは2000年8月。前の診療所は手狭で老朽化も進んできたため、土地を探していた。しかし見つからず、あきらめかけていたところにここの土地の話が舞い込んできたのだそうだ。「もちろん二つ返事で決めました」と事務長はニッコリする。
 旧天沼診療所は旧健友会・西荻窪診療所の分院として1960年に開設され、一貫して地域医療を担ってきた。荻窪は杉並区の中では比較的早くから開けた地域で、それだけに古いアパートも多い。特に診療所界隈の天沼地域は、高級住宅街というイメージのある杉並区の中では低所得層が多い地域で、生活保護受給者も多い。
 そうした人々から信頼を寄せられてきた天沼診療所は、敷地は狭いのに患者さんが多く、「私が聞いた話では、うなぎの寝床のような敷地だったので患者さんの待つ所がなく、階段に座って待つ、その『階段席』がなくなると外で立って待つというような状態だったそうです」と宮澤和美看護師長は話す。診療所に寄せる地域の人々の信頼が目に浮かぶようだ。95、6年まで日曜診療もやっていた。

若い患者さんが増え、医療と介護の連携も進んで

 この伝統を引き継いで今の場所に引っ越してきたわけだが、立地条件の良さが幸いして、健保本人の若い患者さんが増えているそうだ。事務長は、「これはうちの大きな特徴ですね。たとえば9月で見ると、外来件数569件のうち高齢者は235件、約4割です。どの診療所も高齢者がだいたい5割を超えていますから、それに比べるとうちは高齢者の比重が低いです」
 とはいえ、外来患者さん全体を見ると、落ち込みが激しいのは他の診療所と同じだ。外来件数は月平均600〜700件。700件を超えたこともあるが、今は600件を切る月が多くなってしまった。西荻診療所の事務長が「協同組合報」8月号で、「02年度の医療改悪で、高齢者医療費の定率制の導入、健康保険本人の3割負担、外来総合診察料廃止の問題などがボディブローのように徐々にきいてきているのではないか」と指摘した問題は天沼診療所も例外ではなく、外来を伸ばす方策が立たないのも他と同じだ。
 それでもここは予算を達成して何とか黒字を維持しているという。その理由はどこにあるのだろう。
 天沼診療所は60坪3階建てで、2階には「ヘルパーステーションほっと杉並」が併設され、居宅介護支援事業所としてケアプランも作成している。「診療所の意見書はすごくわかりやすいなどといったことで近隣のケアマネさんや福祉事務所からの紹介が増えています。医療と介護の連携をとって在宅に力を入れているのも、この診療所の大きな特徴です」と看護師長は説明する。

職員の情熱と所長の情熱が相乗効果になって

 健友会全体では診療所の往診患者さんが減ってきており、それも02年度には610人だったのが現在は500人を下回っている。定率制の導入、往診する開業医の増加など要因はさまざまあるが、100人以上減っているのは由々しき事態だ。
 こうした中で、天沼診療所は今年度の目標の第1番目に「在宅を増やす」ことを掲げた。在宅訪問件数は去年、月に58件まで行ったが、今年1月には43件に減ってしまった。これではいけないと奮闘し、5月49件、9月57件、10月59件と徐々に増やし、60件が目前というところまで来た。
 この往診を竹崎三立(みたて)所長が一手に引き受けている。火曜と金曜の午後は毎週、月曜の午後は隔週が往診日だ。少ない日で11〜12人、多い日は17〜18人にもなるという。地域ごとに集中できれば効率がいいのだが、患者さんにもデイサービスに通うなどの予定があり、診療所の都合で日程を組むことはできない。
 さらに、遠い地域からの依頼も断らない。そのため、件数は増え、範囲は広域になるという事態になり、所長はますます多忙になっているのだが、民医連医療に40年近くたずさわってきた所長は静かに話す。
 「私は診療所の医療に生きがい、やりがいを感じています。それに楽しんでもいるんです。患者さんの身近なところで、生活の困難も含めて患者さんやご家族と一緒に悩み、共感しながら仕事をしていますから」
 在宅が増えているのは、医療と介護の連携をとるための努力を積み重ねている職員の情熱と所長の情熱が相乗効果となっているからのようだ。
 現在、常勤職員は所長、看護師3人、事務2人の計6人。経営が厳しいため、職員数はしぼりこんでいる。
 「地域活動をやるには人的資源が必要ですが、このとおりギリギリのスタッフですから、私も含めて忙しすぎ、実際の活動という点では不十分さはあります」と所長。それでも商店街との付き合いを大事にしてきており、顔なじみが増えているという。友の会は、囲碁、食事会、映画鑑賞会などのサークル活動に力を入れている。
 「今後は健康まつりをやっていこうとも話し合っているんです。健友会全体が厳しいので、一つひとつ具体的に方策を立てて実践していかないとと思っています」と事務長。民医連の診療所が積み重ねてきた理念、実践にどう共感し、明日に向けてどう方策を立てるか。スタッフ一同、今は大きな転換期だと身を引き締める。


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