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協同組合法vol.29

ほっとコラム 七月ので・あ・い

 「ボクは『仰げば尊し』が大好きなんです」
 三上満校長からそう告白されたときにはビックリした。
 「わが師の恩」「身をたて名をあげ」などその歌詞ゆえに、そして学校で強制されたという記憶から、わたしのまわりには、この歌を拒絶する人が多い。しかし、スコットランド民謡独特の牧歌的で哀調をおびたメロディーは多くの日本人から支持されてもきた。このとき「実はわたしもです」と口走りつつ、三上校長在任中に『仰げば尊し』を歌うぞと心に誓った。
 その機会は一年後に訪れた。
 第6回卒業式の準備会議の席上、わたしは卒業生たちに「三上先生は『仰げば尊し』が好きらしいよ」とリーク。素直な卒業生の結論は「うたう」だった。こうして、楽しみ半分・怖さ半分の複雑な気分の中で卒業式当日を迎えた。
 卒業式は心温まるものだったと思う。今でも1科5期生の滂沱(ぼうだ)の涙と2科6期生の個性的な顔立ちが目に浮かぶ。
 卒業式終了後、案の定というべきか、教員をはじめとする少なからぬ皆様から叱責を頂戴した。ずいぶん以前の卒業生からは「わたしたちが歌いたいと言ったときは駄目だったのに……」とぼやかれた。わたしはただひたすら嵐が通り過ぎるのを待っていた。三上校長はと見ると、バツが悪そうな顔で沈黙。たしかに実行犯はわたしだが、主犯は先生なんだから助けて、という気もしないではなかったが…。二人きりになったとき、三上校長は「歌詞がねえ」と愚痴を漏らした。可愛かった。
 ある日、ゴーリキーはトルストイとともに海辺を散歩していた。そのとき数名の将校とすれ違う。日頃トルストイは軍隊や軍人をボロクソにこき下ろしていたのだが、背筋を伸ばして颯爽と通り過ぎた彼らの後ろ姿に向かってつぶやいた。「なんて素晴らしいんだ」。
 こどもたちと居るとき、歓びのあまり瞳がふるふると震える偉大な教育者・三上満もまた、矛盾の大きな振幅の中にいる。こどもの心を持ったままで―
 ”ひとは理性のみにて生きるにあらず”そして、
 ”今こそわかれめ、いざさらば”
東葛看護専門学校・三輪田 達)



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