前号へ
次号へ
vol.30トップ
|
トピックス
|
医者のつぶやき
|
事業所を訪ねる
|
看護Now!
|
読者のたよりから
|
ほっとコラム
電子カルテはまだまだ成長過程。
使いながらソフトを育てていく
新築移転と同時に電子カルテ導入
JR高円寺駅北口を出ると、変わった名前の商店街が目に飛び込んでくる。純情商店街。ねじめ正一の直木賞受賞作、『高円寺純情商店街』の舞台だ。すたれる商店街が多い中で、ここは独自の努力を重ねているのだろう、活気が伝わってくる。
にぎやかな純情商店街に続いて庚申通り商店街があり、そこを抜けると早稲田通りにぶつかる。その先の大和町中央通り商店街を入ると、左手に「やまと診療所」が見える。淡いピンク色の新しい建物だ。
「まず、室内を一通り案内しましょうか」と、安藤博之所長が自ら案内役を買って出てくれた。3階建てでエレベーターがついている。周囲に高いビルがないため、屋上からの眺めがじつにいい。「大和町はこの辺りでは空襲を唯一免れた地域なので、古い家屋が多く、古くからの患者さんが多いです」。1966年に開設され、地域に密着し地域の人々とともに歩んできた診療所は、来年40周年を迎える。
「ここは50坪あるんですが、移転する前は開設以来ずっと20坪の2階建ての借家で頑張ってきました。古かったから、家賃はむちゃくちゃ安かったですよ」。18万円だったというから、なるほど安い。
ここに移転・新築したのは(といっても、以前の場所から70メートルしか離れていないそうだが)、03年12月、引越しを暮れの27日に行い、年末年始にかけて作業を進め、04年1月5日にオープンした。暮れの引越しはつらいだろうに、「職員は多少の犠牲を払っても、あえてそうしようと決めた」のだそうだ。「あえて」という所長の言葉に、覚悟みたいなものを感じるのは気のせいだろうか?
「いや、職員一同、たしかに覚悟しての引越しでした。じつは移転新築と同時に電子カルテを導入したんです。私が言いだしっぺで、最初は抵抗もありましたが、移転新築こそ最大のチャンスだと思ったんです」と所長。民医連の診療所での電子カルテ導入はここ1年急速に増えたが、やまと診療所が導入したときはまだ3、4番目だったそうだ。「今は20ぐらいの診療所に入っているようです。うちは手ごろの大きさということもあって、よく見学に来ます」
ということで、今回のテーマは診療所における電子カルテ導入について――。
電子カルテのメリット
紙面の都合でのっけから核心に入るが、電子カルテのメリットはどこにあるのだろう。「実際には思ったほど効果がない」「もう少し待つ」という声もある中で、やまと診療所ではおおむね順調に推移しているという。まだ途上であることを前提に、所長にメリットを聞いた。
「まず、職員の労働量の大幅削減になることです。たとえば、看護師さんが検査結果の伝票をカルテに貼る作業があります。粘着式になっているとはいえ、何百人分となれば大変な労働です。それから、診察の場合、事務の人がカルテを出す、ハンコを押す、医者が書く、それを看護師が受付に戻す、あるいは処置に回す。看護師が受付の会計に戻す。紙カルテのときはこれらの動きが必要でしたが、電子カルテでは全部消滅します」
やまと診療所では電子カルテの場合の動きを見越して、看護師・事務の動線を全部診察室の後ろに通した。
さらに、どの部屋でもコンピュータが使えるように配線した。「新築こそチャンス」という所長の言葉はたしかに納得できる。
では電子カルテは具体的にどう活用されるのか、新患の場合で説明してもらった。「まず受付で患者さんの情報を電子カルテに入力し、それを私が見て、『じゃあ先に尿検査をやろう』といった判断をします。私のオーダーを見た処置室の看護師は、患者さんに尿検査のコップを渡します。その結果を処置室の看護師が電子カルテに記入します。私は診察室にいながら『こういうことか』とわかる。私も処置室の看護師も動かずに、画面を見ながら、オーダー、結果記入、結果判断ができるわけです」
なるほど!と思いつつ、本当にこんなにうまく行くものなのか、鈴木多加子看護師長に聞いてみた。「もちろん不慣れな面はまだありますが、業務が軽減されてきていることは確かです。でも、最初は大変でした。なにしろ建物が変わった、動線が変わった、カルテが変わった。一気にみんな変わったわけで、とにかく必死でした。患者さんに『最初の頃は、怖い顔で画面を見つめているので、話しかけることができなかった』と言われちゃいました」
患者さんに「申しわけありません。少しの間辛抱してください」と詫びながら、懸命に慣れていったという。
他にもメリットはいろいろあるそうだ。まず、紙カルテは年々かさばっていくが、電子カルテのCDは場所をとらないから、スペースが節約できる。また、電子カルテを見ながら説明するので、情報開示が進むし、検査の手間などで節約できた時間を診療に回すこともできる。さらに、と所長は続ける。
「保険請求の電子請求化は早晩来るでしょうから、それに対応できます。それから、あと数年で紙の紹介状は消えると思いますよ。レントゲン、心電図、血液検査などのデータがCD1枚に書き込まれるようになると思います」
まだある。慢性疾患管理や中断チェックの情報検索がすばやくできる。病名、薬、受診時期などの条件を入力すると、それに沿ったデータが瞬時に出る。一方、レントゲンは画質、処理能力ともまだこれからで、値段も高いため、やまと診療所ではもう少し待とうと判断している。
「電子カルテはまだまだ成長段階です。今、ようやく小学校4、5年といったところかな。私は、良くなるのを待って導入するというより、使いながらソフトを育てていくことが大事だと思うんです。東京民医連では診療所で使うソフトは全部同じものにしていて、各診療所でのにがい経験、いい経験をソフト会社に返し、それをソフトに反映させています」
患者さんに「申しわけありません。少しの間辛抱してください」と詫びながら、懸命に慣れていったという。
他にもメリットはいろいろあるそうだ。まず、紙カルテは年々かさばっていくが、電子カルテのCDは場所をとらないから、スペースが節約できる。また、電子カルテを見ながら説明するので、情報開示が進むし、検査の手間などで節約できた時間を診療に回すこともできる。さらに、と所長は続ける。
「保険請求の電子請求化は早晩来るでしょうから、それに対応できます。それから、あと数年で紙の紹介状は消えると思いますよ。レントゲン、心電図、血液検査などのデータがCD1枚に書き込まれるようになると思います」
まだある。慢性疾患管理や中断チェックの情報検索がすばやくできる。病名、薬、受診時期などの条件を入力すると、それに沿ったデータが瞬時に出る。一方、レントゲンは画質、処理能力ともまだこれからで、値段も高いため、やまと診療所ではもう少し待とうと判断している。
「電子カルテはまだまだ成長段階です。今、ようやく小学校4、5年といったところかな。私は、良くなるのを待って導入するというより、使いながらソフトを育てていくことが大事だと思うんです。東京民医連では診療所で使うソフトは全部同じものにしていて、各診療所でのにがい経験、いい経験をソフト会社に返し、それをソフトに反映させています」
逆境を逆手に取って
では、データのセキュリティシステムはどうしているのだろうか。機械は壊れることがあるし、火災や地震などで破壊されることも想定する必要がある。「将来的には健友会全体で別の所に保存するシステムをつくり、二重三重に安全にしたいと考えています」と所長。今のところは所長が毎日、最新のデータをノートパソコンに落とし、それを持ち帰るそうだ。飲む予定がある場合には一度家に帰り、ノートパソコンを置いてから再度でかける。
「自宅が診療所から12、3分という距離ですから、それが可能なんです。そうは言っても、医者の労働量が増えるかなとは思っていたんですが、やっぱりちょっと増えました。でも、患者さんの病気の管理という点では楽になりました。往診にノートパソコンを持参して、『最近、血糖値が上がり気味ですよ』などとデータを見ながら診察できるようになりました」
外来患者数は月平均630〜650件。02年度を境に減ってきてはいるが、「踏みとどまっているほうだと思います。新築してからは特に新患の患者さんが月に50〜60人と伸びているんです。20代、30代の若い患者さんが増えていますね」と中園紳一郎事務長は説明する。経営面では、数年前の1000万円台の収益からはどんどん下がってきたが、減価償却費などの重い荷物を背負いながらも、何とか黒字を維持しているという。
常勤のスタッフは所長、看護師3人、事務1人の計5人。それに看護師のパート1人、事務のパート1人と、かなりスリムにした。看護師が多いのは、去年9月から居宅介護支援事業所を併設し、2人がケアマネ業務を兼務しているからだ。ケアプラン数は月平均50件弱、すぐ近くの訪問看護ステーションと協力して在宅分野を担っている。
「高円寺駅前のビルクリニックの開業ラッシュはすごいです。在宅にも足を踏み込んできていますしね。この地域の特徴は高齢者が多いことと、若い人が増えていることです。高齢化がさらに進んで一人暮らしができなくなってここを離れ、そこにマンションやアパートなどが建って若い人が住む。その若い層、それから働き盛りの壮年層にわれわれがいかに食い込めるかが今後の課題です」と所長は話す。また、開業医は職住一致の医師がほとんどで、夜間・休日対応ができるという強みを持っている。やまと診療所では携帯での夜間・休日対応をきちんとすることでそれに対抗している。
「地域のお祭りや町内会に積極的に出ていく。医療相談なども積極的に受けていく。こうした私たちならではの地道な活動をやりながら、質の面で応えていく。都内の診療所の困難性は共通していますが、逆境を逆手にとってやっていきたい」と3人は異口同音に語っている。
vol.30トップ
|
トピックス
|
医者のつぶやき
|
事業所を訪ねる
|
看護Now!
|
読者のたよりから
|
ほっとコラム
前号へ
次号へ
▲このページのトップへ