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協同組合法vol.22

医者のつぶやき
至福の時

新松戸メンタルクリニック所長 長谷川 信也

 「精神科のクスリをのんでいると生命保険に入れないので、思い切ってクスリをやめようと思って……」と言われて慌てました。その患者さんは躁うつ病……ここしばらくは安定した状態ですが、高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患で、内服の継続は必要です。どうしたものかと先輩や同僚に相談すると「昔から精神疾患はそういう扱い」「ガン保険は大丈夫だろう」などさまざまな意見がありました。
 保険会社に勤める知人に調べてもらって驚きました。精神科にかかっているというだけで、ガン保険も含めたさまざまな生命保険に入ることが出来ないというのです。3年間治療なし・クスリなしなら加入できるようですが、現実的には困難です。つまり僕が診ている患者さんの多くは、これから生命保険に入ることが出来ないということなのでした。高血圧や糖尿病なら、病院にかかって治療を受けている方が、加入は容易だと聞くと、なんで精神障害だけ……と腹が立ってきました。
 政府の進める医療改革の中で、混合診療を認めさせようという動きがあります。
 混合診療とは、(1)公的医療保険では基本的な疾患とその治療だけを保障する、(2)高度な医療・特別な医療は自由診療(自費診療)にする、(3)この二つを同一の医療機関で行うことを認めるということです。ガンなどの治療では、欧米で標準的な治療が日本で認められていないために、その治療を受けられないといった事態が生じていると聞きます。「お金のある人」はそういった治療を選ぶことが出来るようになりますが、こうした標準的な治療は保険で行えるようにするのがスジでしょう。「この病気には良いクスリがありますが、保険はききません」といったことが日常的になると、お金のあるなしで命を差別することになります。
 公的保険を縮小して国としての支出を抑える一方、自由診療分も含めた医療費総計では現在の何倍かの巨大な医療市場が生まれます。そこでの治療を受けるには、営利を目的にした民間の保険会社が売り出す医療保険に入らなくてはなりません。結局のところ医療を利用する人の経済的負担が増える制度「改悪」だと思います。
 障害者手帳・年金の審査が厳しくなり、通院医療費公費負担制度も削られる方向で話が進む中、現状では民間の医療保険からも放置されている精神障害者の医療は、経済的には誰が支えるのでしょう。この国の政治家は、精神障害に陥ったのも「自己責任」だと言うのでしょうか?
(「月刊新松戸」より転載)



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