[座談会]
新しい方式による給食共同事業がいよいよスタート!
出席者
吉光寺伸也(代々木病院サテライトキッチン副主任)
篠木 健 ((株)給食協同サービスリップル、セントラルキッチン責任者)
司会/江口正博((株)給食協同サービスリップル代表取締役)
4月1日、葛巨H協同サービスリップルが営業を開始しました。給食業務の共同事業化は東京勤医会と健和会が協同してプロジェクトを立ち上げ、4年余の歳月をかけて準備を進めてきたものです。センターで調理したものを冷却し、サテライトキッチンに搬送して最終調理をし提供するという「センター・サテライトキッチン方式」と、真空低温調理法(同)という新調理システムの導入は日本で初めての試みです。
その要となるセントラルキッチンは埼玉県三郷市に建設されました。サテライトキッチンとして4月1日からスタートしたのは代々木病院、柳原病院、柳原リハビリテーション病院、芝病院、葛飾やすらぎの郷、千寿の郷の6ヶ所、6月からは東葛病院とみさと健和病院、7月からはみさと協立病院でスタートします。
給食共同事業がめざすもの、何がどう変わるのかについては「協同組合報」04年2月号で江口正博さんへのインタビュー記事を掲載しましたので、今回は、スタート直後の代々木病院サテライトキッチンにスポットを当てて、実際にスタートしての日々の苦闘、問題点の改善、目標に向かってどう進んでいくか、などを中心に話し合っていただきました。
スタート1ヶ月半
【司会】給食共同事業が何をめざすのかについては、「リップルの品質方針」にまとめられていますので、それをお読みください。簡単に言うと、安全でおいしく、喜んでいただける食事の提供をめざす、食を通じて地域の要望に応えていく、経営改善にも取り組んでいく、ということです。
さて、実際にスタートして1ヶ月半が過ぎました。「センター・サテライトキッチン方式」という新しい方式で、調理の仕方も「真空低温調理法」という新システムを取り入れています。事前にテストキッチンを作って試行錯誤しながら作り上げてきましたが、いざ実際に始めてみると、毎日いろいろなことが起きています。センターもサテライトも日々苦闘しながら改善していっているというのが現状だと思います。篠木さん、まず、スタート直後のセンターの様子をお話しください。
【篠木】センターは4月1日の配送開始に向けて、3月27日から稼動しました。慣れない職場、慣れない機器、慣れないシステムですから、作業一つにも時間がかかります。当初は午前2時、3時までかかるといった状態でした。
6ヶ所のサテライトに食材を搬送するわけで、それぞれに間違いなく積み込まなければいけないんですが、届かなかったりしたこともありました。それから、「煮物が固い」とか「味付けがうすい」といった苦情もありました。サテライトからいろいろな批判をもらいながら、「加熱の時間をもう少し長く取ってみよう」とか、一歩ずつ改善しているところです。
4月の1週目は午前2時、3時だったのが、2週目は12時、3週目は午後8時頃には作業が終わるというところまで改善し、5月にはいってからは午後6〜7時位には終えるところまできています。まだ十分ではありませんが、少しずつうまく回転し始めたといったところでしょうか。
【司会】新しい事業を立ち上げるというのは大変なものだなと改めて感じています。特に最初の2週間は本当に大変でした。サテライトからセンターにしょっちゅう電話がかかってきて、それを受けて、どこでどういう問題が起きたのかを検討し、議論しながら一つひとつ解決してきました。
患者さんと一番接点のあるのはサテライトです。吉光寺さん、サテライト側の1ヵ月半をお話しください。
【吉光寺】率直に言うと、1ヶ月半が長かったなぁと。忙しいんだけど、とにかく長く感じるんです。患者さんから「前のほうがおいしかった」という声を聞くと、がっくりきちゃって。でも、そういう声のほうがまだ多いんです。こんな声をセンターに伝えなければいけないのが、また辛い。今は、患者さんからできるだけ早く「おいしい」と言ってもらえるように頑張っていくしかない、それだけを考えながら日々やっています。
【篠木】代々木病院の場合は入院患者さんの食事だけでなく、通所リハビリの利用者さん、精神科デイケアの利用者さん、それから外来透析の患者さんの食事もあります。これまでは献立を別にしていませんでしたが、今は別にできるようになりました。その辺のとまどいもあったのでは?
【吉光寺】それはありました。時間が限られる中で、入院患者さんのメニュー、通所のメニュー、透析のメニューと別にやっていくのは大変でした。でも、1ヵ月半たって、リズムはつかめてきました。
【司会】オープンして間がない頃でしたか、サテライトから「野菜が固い」と。そういった苦情が何日か続いたあと、「ハンバーグがおいしかった」という投書が来ていると。ホッとしました。「おいしい」と言われると、本当に励みになります。
「熟知」まで行かないと、おいしい料理は出せない
【司会】栄養士、調理師は全員「リップル」に移籍し、「リップル」の職員となります。そこで、これをきっかけに人事交流もはかろうということで、大幅な異動を行いました。代々木病院栄養課も半分が変わりました。さらに、以前は調理師8名、栄養士1名の9名でしたが、今は調理師5名と栄養士1名です。体制も変わった中での新システム立ち上げですから、当然大変なはずです。
【吉光寺】人が変わって、流れを知っている人間が1日2人という中で、流れを教えながら、時間通りに出して、ミスをしない、という体制まで持っていくのがすごく大変でした。今でもミスはあるんですが。たとえば、患者さんに出す前に、付け忘れがないかチェックするんですが、それでも付け忘れが増えています。患者さんにも看護師さんにも迷惑をかけるので、もっときちんとしなければいけないと思っています。
代々木病院はそれほど大きな病院ではありませんが、さっきも言ったように、入院患者さん以外に通所リハ、精神科デイケア、外来透析と、昼は180食ぐらいに膨れ上がるんです。最初の1週間はデカい声を張り上げっぱなしでした。
【篠木】代々木病院の投書に、「魚が生臭い」というのがありましたね。
【吉光寺】魚にスチームコンベクションで焼き色をつけると、パサパサになっちゃうんです。それで、スチームだけでやったんですが、それが生臭かったようです。皮に焦げ目がついていない状態で食べると生臭く感じるので、それからはバーナーで皮を焼いて焦げ目を付ける方法に変えました。
【司会】真空調理は優れた調理法ですが、それだけに奥深いものがあるようですね。
【吉光寺】そうなんです。「熟知」まで行かないと、おいしい料理は出せません。
【篠木】調理師さんがしっかり仕上げて、おいしいものにするわけですから、サテライトの責任は大きいですね。
【吉光寺】ある意味、外野の守備みたいなもので、抜かれたら終わり、プレッシャーが大きいです。
【司会】真空低温調理法で作ったものをサテライトに運んで最終調理をして提供する、という方法を中心にしたシステムは、日本で初めての方法です。真空調理については、専門の先生に講習をお願いしたり、テストキッチンで試作したりして研究・学習してきたんですが、それを全員のものにし、吉光寺さん言うところの「熟知」まで行くには、もう少し時間がかかるかもしれませんね。
それに、システムに乗せるという点では他に先んじて取り組むわけですから研究を重ねないといけないし、試行錯誤も一定続くことになるでしょうね。
職員たちは身を粉にして頑張っている
【司会】代々木病院のサテライトでは、職員食を提供しようという計画を持っていますが、具体的にはどうですか。
【吉光寺】今はそこまではちょっと考えられないというのが正直なところです。
【司会】リップルには「選択メニューを増やしてほしい」「退院した患者さんに治療食を提供できないか」「地域の高齢者などへの配食事業の運動を一緒にできないか」など、さまざまな要望が寄せられています。昨日は健和会理事会の弁当を初めて提供しました。4月に依頼されたときはまだ無理でしたので、やむなくお断りしたんですが。「無理」と断ってしまう前に「どうやったらできるだろうか」と考える。そこが事業をやっていくときの大切な点だと思います。
吉光寺さんも代々木病院調理部門の責任者になって今は大変だろうけれど、いつ頃からどう取り組んでいくかといったことも考えていかないといけないよね。
【吉光寺】それはそうだと思います。でも、食堂を開く前に、職員の皆さんからもっと信頼を得ないと。「栄養課良くなったね、おいしいよ」と言われて、それから開けば可能性はあると思いますが。
【篠木】代々木病院の場合は過去に職員食堂をやっていて、そのスペースを残してありますから、物理的な条件はあるんです。職員からの要求は高くなってくるだろうと思います。それから、代々木病院では選択食の準備を進めているところで、これが実現すると、目に見える形でアピールできると思います。
【司会】では、最後にひとことずつお願いします。
【吉光寺】患者さんから「おいしいね」と言われることが一番嬉しいことなので、とにかく今はそれを聞きたい。「リップルの食事でないと嫌だ」と言われるぐらいになりたい。それが今の目標かなという気がします。
【篠木】センターもサテライトも一体となって、どこからも誰からも「おいしい」と言われる食事を提供できるセンターになりたいですね。また、サテライトは病院、老健施設、デイサービスなど、多様性があります。それらをうまくつなげていく役割をセンターが担えたらいいなと思います。
【司会】センターが困難なとき、こちらからの要請に応えてサテライトから多くの職員が応援に駆けつけ夜遅くまで身を粉にして頑張ってくれました。つい数日前も午後10時ごろ2階から玄関に降りていったら、篠木、阿部、植草、片桐のセンターの管理者4名が、玄関ホールで座り込んで問題点の解決策を話している場面に出くわしました。今日は吉光寺さんから、調理部門の責任者という新しい任務に一生懸命取り組んでいる様子も聞かせてもらいました。
今日の座談会では、立ち上げ真っ只中の苦闘の様子を紹介することにとどまりました。でも、今紹介したように、本当にセンターもサテライトも頑張っていますので、あと半年もすればかなり違った状況が作れるのではないか、またそうしなければと思っています。
そういう決意を固めあって今日の話し合いを終わりたいと思います。どうもお疲れ様でした。
[リップルの品質方針]
一.お客様のニーズに応え、HACCPの取り組みを推進し、安全で、おいしく、喜んでいただける食事の提供をめざします。
一.お客様と心の通い合うサービスを提供することをめざします。
一.生産者、地域のみなさまとともに、食の安全、自給率向上など、食の問題を考え、行動します。
一.地域のみなさまの健康づくりに役立ち、安心して住み続けられるまちづくりに食を通じて貢献することをめざします。
一.働きやすい職場環境作りを進め、力を合わせて、健全な経営をつくり、事業を発展させます。
一.上記を通し品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善を図ります。
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センター・サテライトキッチン方式
加熱温度、湿度、時間を精緻にコントロールできるオーブン(スチームコンベクションオーブン)などの機器や真空低温調理法などの新しい調理法を導入してセンターで調理したものを急速に冷却し、一時保管した上で病院や介護施設などサテライトキッチンに搬送・保管し、直前に最終仕上げ・再加熱して提供する方法。
真空低温調理法
下ごしらえした食材を袋に詰め、調味料やオイルなどを加え、真空包装機で空気を抜き、真空パックする。それを温度と時間の管理が正確に行える加熱機器で低温加熱する調理法。素材が持つ栄養素を多く保持し、旨みを逃がさず、最大限に引き出す。ちなみにブロッコリーのビタミンC残存率は通常調理47%に対し、真空低温調理法では97%。
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