前月号では「4、組合のメリットの見直し」として、(1)ハード事業の見直し、(2)安全の欲求型、の2点について述べた。今月号はその続きから始め、最後に、組合活動活性化のための方策を3点提案して最終回としたい。
(3)ステータス共同型
組合員のステータスを高めるのも組織化のメリットである。
ゲームセンターなどの娯楽機械オペレーターの事業者で組織するA協同組合という組合があった。この組合は、ゲームセンターのゲームの景品の共同仕入を行っていた。毎年、組合の景品販売収益の一部を青少年育成のために警察を通じて青少年育成団体等に寄付し、マスコミがこれを世間に報道してくれた。組合員の事業の健全性を世間にアピールできたわけである。
「不良の溜まり場」というイメージの「ゲームセンター」を「アミューズメントパーク」として今日の隆盛に導いたのは、こうした組合の地道な活動による面もある。そして組合員は、世間の評価が改善されるにつれ、仕事に対する誇りを高めていったのである。
露天商を営む人たちで組織するB協同組合は、各地の祭りなどに出店する組合員に、「B協同組合組合員の章」を配布している。この看板を掲げることで衛生面の信頼を確保するなど一定のステータスを得ている。
「病院で死ぬこと」という映画は、一般の映画館でも上映されたので観た人も多いだろう。あの映画を制作したのは高齢者で組織したC企業組合である。今後の高齢化社会の在り方を問いかける映画であったが、高齢者の働く場の確保の重要性をアピールし、組合のシンボル的な映画となった。
映画を制作しようが、寄付をしようが、組合員には直接的なメリットはない。だが長期的に見た場合の社会的評価の向上というメリットは計り知れない。組合の活動が、組合員の地位を向上させているのである。
5、むすび
組合活性化の要件は、間違いなく目的の明確化である。ここまで組合の活性化しない5つの要因をあげ、活性化をメリットではかるなら、ソフトメリットも評価してほしいと述べてきた。つまり、不活性化の要因を考え、不活性な組合でも一定の価値があることを主張してきたわけである。
しかし、21世紀の中小企業連携は、このような水や空気のようなメリットを持った組織の先を行く、もっと戦略的な目的を持った連携組織でなければならない。20世紀の組合制度が、新たな21世紀型の戦略的な中小企業連携の母体となってくれることを期待している。
そこで、最後に、21世紀型の中小企業連携を考える指針として、組合活性化のための方策3点を提案したい。
(1)基本戦略の明確化
基本戦略を構築するための手順は、(1)組織の目的の明確化、(2)SWOT分析、(3)基本戦略(ドメイン)の構築、(4)具体的戦術の検討、の順に進めるとよい。4ページの「某美容業協同組合の戦略策定フローのシミュレーション」を参考にしていただきたい。
(2)優秀な事務局スタッフ
組織の不活性となる原因を除去できるのは、事務局だけである。縁台将棋も、争いごとを嫌う体質も、意思決定の鈍さも、組合をごみ箱扱いする者に対する牽制も、事務局スタッフの事前準備、根回し、専門知識の吸収等で解決できるものである。
問題は、横並び意識である。組合構成員の横並び意識が、組合活性化を阻む要因になっているのは否めない。特に、同業種網羅型の歴史の長い組合や商店街組合のような地域型の組合においてこの問題は顕著である。この種の組合で、横並びの掟を破る事業を展開すると、組織を混乱させてしまう。
しかし、現状の経済の閉塞状況を打破するためには、格差是正を目的とした組織化ではなく、輝く中小企業の更なる発展のための組織化が必要であり、横並び意識の排除は組織の再編成、解体をも辞さない覚悟で進めなければならない課題である。
組合を分裂させることになるかもしれないが、ある程度勇気をもって新統合を考えるべきだ。財閥系といわれた銀行がグループの看板を捨てて新しい統合をしている。中小企業も自社のコアの部分以外は他社との統合を考えるべきである。
手始めに、他の組織との連携関係を事務局レベルで促進し、有力企業に戦略的連携の機会を提供することから始めてはどうだろう。各業界団体にはこの不況の中でも元気のよい企業が必ずある。そうした企業と付き合うことで新しい統合の芽を見いだすことができるだろう。外部に働きかけるのは、組織内に特別なグループをつくることにはならないから、横並び意識を刺激することなく、組織を活性化できるかもしれない。
開国をすると、組織の中に新撰組のような一群が現れて、開国論者を批判し、抹殺しようとする。しかし、それに怯えているときではない。組織を「ぶっこわす」ことになっても、やるべきことがわかったらやるべきである。
保守的で、現状がベストだと考えている者たちと議論しても無駄である。その者たちにとってベストであれば、他の者たちのことは考えない輩が組織の中を跋扈(ばっこ)している。所詮は新撰組に過ぎないのであって、時代の流れの中で泡と消えるのであるから、無視して改革を進めるべきである。新撰組は怖い存在だが、改革が成功して業界内の考えが変わっていけば自然消滅するのである。
(3)安定した財源の確保
中小企業等協同組合法が制定された当時に設立された組合は、組合会館の家賃収入や火災共済協同組合等の代理所としての安定した収入源を持っている。最近では、倒産防止共済制度の復託団体、中小企業PL保険制度、グループ保険等で安定した財源を確保する例が見られる。
最後に、安定財源確保の縦糸事業と横糸事業をうまくミックスし活性化している例として、協同組合Kを紹介したい。
(協)Kは、共同求人を目的に昭和38年3月に設立された機工同友会(協)が母体となっている。共同求人事業が衰退するにつれ、休眠化していったのを、昭和50年代後半に再建した。再建の方法は、縦糸事業としての金融事業、労働保険事務組合、高速道路通行料金別納事業による安定財源の確保をするところから着手した。財源の確保に成功した後は、異業種組合として交流会の開催、新入社員研修と様々な組合員の横のつながりを強くする事業を展開している。
この10年の事情を前専務理事のA氏は、「当初5年間は財政基盤確立のため企業性に傾斜した『経営』を行ったことは否めません。財政が、十分とはいえないまでも、安定した後半の5年間は、団体性も志向した運営を心掛けてきました」と語っている(組合機関誌「Kだより」1998年7月号)。
現在は、事務局職員12名、組合員800余名の異業種大型組合として、異業種交流会、無料金融経営相談、教育研修等の事業を活発に行っている。「クリッピー」という新型のクリップは、この組合の異業種交流から生まれた新製品である。
事務局職員の研修にも熱心で、組合員の相談には、社会保険労務士、中小企業組合士等の公的資格を持つ事務局スタッフで十分対応できる体制であるが、税理士、中小企業診断士等の外部専門家との連携も緊密である。
再建当初から業界団体としての道を選択せず、異業種で組合内にグループができることを奨励し、組合の中での自由度を高めて成功している例である。この(協)Kは21世紀の中小企業連携の在り方として参考となるものである。
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