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協同組合法vol.24

事業所を訪ねる(21)
(株)外苑企画商事 神宮前薬局

小さな薬局ならではの地域密着て


ホッとした表情で帰っていった

 神宮前薬局(1997年開設)の前面は大きな窓ガラスになっており、散歩や買い物などで行き交う人がよく見える。
 「この地域には古くから住んでいる方が多く、戦前からという方もいらっしゃいます。あっ、あの方も近くに住んでいる方ですよ」 と高井紀子薬局長がガラス越しに通りを見る。おばあちゃんが買い物カーを押しながら、ゆっくりと歩いている。
 「この通りを散歩や買い物で毎日通る患者さんもいらっしゃって、2、3日顔が見えないと心配になるんです。先日も、毎日2往復ぐらいする方の姿が見えないことに気づき、外苑診療所に問い合わせて調べてもらったら、入院されていました」
 はす向かいに外苑診療所があり、処方箋の9割は診療所の患者さんのものだという。外苑診療所が誕生したのは今から55年前の1950年であり、古くからの患者さんが多く通ってくる。
 と、そこへ、今度は女性が「ちょっと聞いてもいいですか」と言いながら玄関を入ってきた。
 「利用者さんがエビを食べて下痢をしちゃったんです。ビオフェルミンを飲んでもいいでしょうか」
 聞けば、この女性は外苑診療所が往診している患者さんの家に通うヘルパーさんだそうだ。高井薬局長はていねいに答える。
 「飲んでもいいですが、下痢が続くようなら、診療所に往診を頼んだほうがいいですね」
 女性は「ありがとうございます」と頭を下げ、ホッとした表情を見せて帰っていった。利用者さんの様態が悪化したとなれば、ヘルパーさんも気が気ではない。飛び込みで相談できる薬局の存在のありがたみは想像以上に大きいにちがいない。
 「今のことは外苑診療所にも連絡を入れておくつもりです。こんなふうにここは地域に根ざした薬局なんですよ。処方箋を持ってこられた患者さんとは『今日はあたたかいですね』などと時候のあいさつから始まります」
 東京のど真ん中にある小さな薬局が近所の人からどんなふうに頼りにされているかを目の当たりにし、薬局長の言う「地域に根ざした薬局」という意味がよくわかった。

ゆっくり説明できる

 神宮前薬局の処方箋枚数は月平均約40数枚、スタッフは薬局長と槇野和文薬剤師の二人だ。ぎりぎりの人数ながら、薬剤訪問活動も地域に根ざすための大切な活動と位置づけ、近所の患者さん宅に自転車で出かけていく。その数は10人とさほど多い人数ではないが、交替で出かけるにはこの人数で手いっぱいだ。
 「小さな薬局ならではの特徴のもう一つは、ゆっくり説明ができることですね。患者さんも聞きたいことはどんどん質問してきます。薬をもらわないときも立ち寄って質問される方もいます」
 質問は薬のことだけにとどまらない。「健康食品を買おうと思うんだけど、これ大丈夫でしょうか?」「お母さんにサプリメントを飲ませたいんですが、糖尿病があるから心配で。血糖値に影響しますか?」といった健康食品のことから、「介護保険を申請したいんですが、どうしたらいいでしょうか?」などの介護相談まで、とにかく多岐にわたるという。
 「薬の相談だけでなく、どうしたらいいかわからない人に何をどうすればいいか、どこに相談に行けばいいかをアドバイスする必要があります。わからない場合は調べて、あとからきちんとお伝えします」と薬局長は話す。
 「家族の処方箋も持ってきてもいいですか」と聞いてくる患者さんもいるそうだ。さらに最近、日本赤十字病院の患者さんが10人ぐらい、処方箋を持ってくるようになった。全員近所に住む人だ。
 ここに来る患者さんは近くに住む人か、会社が近い人がほとんどだ。アパレル関係の会社で働く人や学生など、若い患者さんも多い。

結核対策のDOTSにも挑戦

 去年は新しい取り組みにも挑戦した。結核対策のDOTS(直接服薬確認治療)である。これは、患者さんのほうから週2回薬局に来てもらい、きちんと薬を飲むのを調剤薬局が確認するという治療方法であり、1回ごとに患者さんから判を押してもらい、毎回「飲みましたよ」と、この研究に取り組んでいる結核予防会複十字病院にFAXで知らせる。DOTSは結核患者さんに確実に薬を服用させるための結核対策であり、世界保健機関(WHO)が推進している。
 この取り組みは結核研究所からの要請で行ったもので、今回は一人の患者さんが対象だった。期間が8ヵ月と長いため、途中で患者さんが家で転んで骨折するというハプニングが起き、自宅まで何回か届けたこともあったという。
 「この対策は海外では成果を挙げているようですが、日本ではまだ試行的に導入されているにすぎません。外苑企画商事でも初めての取り組みでした。こうした新しい挑戦をすることで勉強にもなるし、民医連以外の病院や保健所との連携もできました」
 これからも、地域に根ざす努力をしつつ、新しいことにも挑戦して、患者さんのために在る薬局として視野を広げていきたい、と薬局長は語っている。




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