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協同組合法vol.24

トピックス/事業協同組合とは何か・組合の基礎

東京都中小企業団体中央会 副参事 猪瀬 博

 「医療と福祉」が丸3年を迎えます。今後、どう発展させていくのか、が問われています。そこで、3回シリーズで「東京都中小企業団体連合会(中央会)」の猪瀬博氏(いのせ・ひろし)の「事業協同組合とは何か・組合の基礎」を掲載いたします。

1、 はじめに

 世はまさに、連携・協調ブームの感を呈している。組織化、組合、産業集積、企業連携、アウト・ソーシング、コ・ソーシング、コラボレーション、M&A、コミュニティ、戦略的連携、事業提携、業務提携、産学官連携、共同出資会社、多様な形態の組織化、多様な連携等々の言葉があふれている。それぞれの意味は何となくわかるが、その違いを正確に説明できる人はいないだろう。
 経済環境の急激な変化の中で、戦国時代並みの離合集散の時代だから、これだけの言葉が氾濫するものと思われる。戦国時代は、寝返り、裏切りの連続の中で自分の妻や子を人質に出して誰かと組み、確実に生き残ることが、トップに課せられた最も重要な意思決定だった。現代は戦国時代にも似た時代ではないだろうか。
 21世紀の中小企業連携組織について考えていくが、その前に20世紀までの中小企業組織の中心であった組合制度について振り返ってみたい。組合制度が中小企業のまとめ役として経済発展に大きく貢献してきたのは事実であるが、その一方で、21世紀の連携を考えるうえでの反省点も残している。その点について考えたいのである。

2、 活性化した組合とは

 何をもって活性化した組合というか、それは難しい問題である。もし共通の活性化パターンというものがあるとすれば、それは次の2点であろう。

(1) メリット>デメリット
 これは不等式で「メリット大なりデメリット」と読む。メリットがデメリットを上回っていればよいということである。多くのメリットを多くの負担によって実現し、メリットがデメリットを上回っている組合が、活性化した組合であることは間違いない。しかし、メンバーに対し少しのメリットを少ない負担で与え、メリット>デメリットの不等式を維持している組合も活性化した組合である。
 メンバーが自転車も自動車も持っていない組合があったとする。この組合が組合員に、自転車を提供する場合と、自動車を提供する場合を比べて、自動車を提供する組織のほうが優れていると決め付けることはできない。自動車には、ガソリン代はかかるし狭い道は走れないなど、それなりのデメリットがあるからである。自動車はメリットも大きいがデメリットもある。組合の目的が自転車の共有で足りるなら、メリットは小さくてもデメリットの少ない自転車を選ぶべきである。
 自動車を提供する組合と自転車を提供する組合のどちらが活性化しているかという問題は、ボランタリー・チェーン(VC)とフランチャイズ・チェーン(FC)ではどちらが活性化しているか、という問題と同じである。VCの自由度を選択するか、拘束されてもFCの標準化のメリットを選択するかは、参加者の好みの問題にすぎない。
 構成員が望んでいるものは何か、そのために構成員はどれだけの犠牲を払う用意があるか、この両方を考えることが重要である。メンバーが自動車を欲しがっているので、自動車を共有したが、ガソリン代を払ってくれる者がなく、駐車場に眠ったまま、という事態にならないようにすることが重要である。

(2) 縦糸と横糸のバランス
 活性化のもう一つの要諦は、組合員と組合の縦の関係(縦糸)とメンバー間の横の関係(横糸)のバランスの問題である。
 国際分業の中で、わが国中小製造業は、試作品や先端技術分野へ進出すべきだといわれるが、そんな仕事が安定的に継続して受注できるわけではない。企業としては、利幅は少なくても安定した量産品と、利益率の高い高加工品のバランスの取れた受注が理想である。組合も同じで、安定した収入を会費収入だけに頼るのではなく、縦関係の事業による安定した財源を持つことが望ましい。
 縦糸の事業の典型的なものは共済事業である。メンバーは掛け金納付と給付金の支給という縦関係しか知らない。メンバー間の横のつながりはなくても事業は機能するのである。
 安定財源確保のために共済事業の実施を提案しているのではない。共同購買、販売事業、会館の家賃収入、保険の代理店収入、高速道路の大口多頻度割引制度など何でもいいから縦関係の収益事業を実施することで、組合員と組合のつながりを蜜にし、そして会費を低く抑えることができる。このことが組合にとっては重要である。
 縦糸の事業は、組合の維持そのものを目的とする程度で十分である。組合本来の目的ではないから、縦糸の事業で財源を確保したうえで本来の目的たる横糸の事業に取り組むことが、組織活性化の道である。ここでいう横糸の事業というのは、共同受注、研究開発、新分野進出、戦略的連携等の「範囲の経済追求型」「スコープメリット追求型」、最近の言葉では「経営資源補完型」の事業である。これらの事業は、シーズ(共同受注の当て、研究開発の種等)がはじめから明らかで、そのシーズにメンバーが集まるのならば目的は明確で苦労はない。しかし、多くの中小企業連携組織は、シーズが不明確なところから活動を始めるのである。
 現在の状況は、安定収入のある組織は、横糸の事業が弱く、横のつながりの強い組合は、安定財源に苦慮しているというのが実体である。

3、 組織不活性の原因

 活性化した組織の条件は述べたが、なぜメリット大なりデメリットが実現できなくて、縦糸事業と横糸事業のバランスが取れないのだろうか。
 組合が不活性の原因は、次の5点である。例を挙げて述べる。

(1)縁台将棋
 ある卸の組合が、組合員の取扱商品のアンテナショップを持つことを計画した。卸の組合による消費者のニーズの把握が目的である。
 この計画に対し、組合の長老の一人が、「その店に、業界の博物館のような機能も持たせ、先達の偉業を称えようではないか」と提案した。皆が腹の中では、アンテナショップは消費者ニーズを把握する場に徹するべきで、業界の歴史を展示すべきではない、と思っていても、長老の発言だけに誰も反対できない。縁台将棋で、自分より強いものが傍らからアドバイスすると、そうせざるを得ないようなものである。結果は、目的を絞り切れないアンテナショップとなり、いつしか閉店の憂き目を見ることになるのである。
 組合事業については、いろいろな考え方がある。将棋の次の一手もいろいろな考え方がある。周囲が意見を言うのはよいが、最終的な決断に対して影響を与える者は、結果に対しても責任を持つべきである。

(2)争いごとを嫌う体質
 ある組合の青年部の幹部が、業界の天皇といわれる人のことを「あの人は、業界の発展に大きく貢献した人ではあるけれども、私は打ち解けられません。私の親父が、あの人と意見対立して、罵倒され、家に帰ってきてからも悔しがっていたのを覚えているのです。私が中学生の頃のことですが、あの時のことは忘れられません」と評した。
 組合内での意見対立の軋轢は、親子二代にわたり受け継がれる可能性がある。だから、組合内での対立を好まない風土が出来上がる。この風土は、ワンマンの誕生を許す。
 ワンマンは、意思決定の迅速性という点で組合運営によい作用をもたらす面がある。ワンマンがいれば縁台将棋の弊害は起きないのである。しかし、ワンマンが判断を誤ると組合を崩壊させてしまう。
 組合のワンマン専務理事が、九州の山林を組合名義で買った。目的は、組合財政安定化のための投機であったが、全く売り物にならない土地で、これが原因で、組合財政は破綻し解散した。執行部は、言うべきことを、言うべき時に、言うべきところで、きっちりと言わなければならない責任を負っているのだが、それができない。結果をみてから、陰でこそこそ「あんな土地だめに決まってるじゃないか。そんなの当たり前だよ、俺は言ったろ、はじめに」と言うのは誰にでもできる。問題は、言うべき時に、言うべきところで言えるかどうかということである。
 理事会で言い争って、後顧に憂いを残すなら、黙して従わない、という選択肢を採るのが農耕民族の特徴らしい。下手な争いをして気まずい思いをするなら、黙っているのが賢い選択ということである。ダンマリを決め込んでも、お天道様と雨さえ降れば作物は育つ。農耕民族に議論は不要なのである。こうした争いごとを避ける体質がワンマンの出現を許し組合を崩壊させることがある。

(3)大根1本抜けない意思決定の鈍さ
 ワンマンも困るが、慎重すぎるのも困る。
 組織で、大根を植えたとする。収穫の時期になって、いつ抜くかの意思決定をしなければならなくなった。タイミング良く抜けるだろうか。ドラッカーは「大根が根づいているかどうかを見ようと、あまりに早く引き抜いてしまう人がいる。他方、いつになってもまだ根づいていないに決まっていると決め付けて、絶対に引き抜かない人もいる(略)性急すぎたからというよりも、むしろ慎重すぎて傷ついた機関の方が多いように思う」といっている。(P.F.ドラッカー著『非営利組織』ダイヤモンド社、P33)
 「す」の入った大根ばかりを収穫する意思決定の鈍さは、組織不活性の原因である。
 (4)と(5)については次号で述べたい。ちなみに見出しは、(4)組合はごみ箱、(5)横並び意識、である。




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