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協同組合法vol.21

事業所を訪ねる(20)
(医)東京勤医会 経堂すずらん訪問看護ステーション

困難なケースが増えているけれど、やっぱり訪問看護はやりがいがある


「30分でも行きます」をウリにして

 経堂すずらん訪問看護ステーションは1999年7月、介護保険制度が始まる前年に世田谷区経堂駅前にオープンした。「断らない」を基本に、30分未満の利用者さんも積極的に受けることで利用者さんを増やしてきたという。

 「利用者さんが平均60人、うち30分未満が25%にのぼります。勤医会の他のステーションと比べて、ずばぬけて高い数字です。30分では収入が少ないし、移動時間ももったいないのですが、『30分でも行きます』をウリにしてきました」と三村尚代所長は話す。

 では、週1回30分未満でどんな看護をするのだろうか。短すぎるのではないかと思うのは素人だから?

 「それがけっこうできるんですよ。バイタルチェックをしてお薬のチェックをして、リハビリで体を動かして、お話もする。利用者さんからは『訪問看護師さんが30分だけでも来てくれると安心できる』と喜ばれています」と所長。こうして利用者さんの信頼を得ることができると、1、2年経って「1時間にしてください」と変更してくる人もいるそうだ。

 スタッフは常勤が3人、非常勤が2人、PTの支援が週1回、事務パートが1人。また、居宅介護支援事業所として70件のケアプランを担当しているため、専任のケアマネが1人配置されている。

 「選任のケアマネさんが50件担当し、私が15件、他のケアマネが7件という配分でやっていますが、うちの規模では件数が多いほうです。いろいろなところから連絡は入るし、それぞれ調整をとらなければいけないし、利用者さん60人の訪問看護をしながらの居宅事業はもう手一杯です。『自分の身を削らなければこの仕事はできないのか』という気持ちになることもあります」と所長は言う。

 11月は大変だったそうだ。月1回の訪問をしていない、あるいは調整会議を開いていないなどを区に文書で報告しなければならず、その整理に追われた。その結果、19件が減算になった。

 「どのケアマネさんも苦労していますが、それでもケアマネをやることで連携が非常に広がりました。ヘルパーステーションは20ヵ所、院所は10ヶ所以上と連携ができています。もうすぐ世田谷にグループホームもできます。利用者さんが安心してこの地域で住み続けられるためには、医療と福祉と介護のネットワークがつくれるかどうかがカギです。それが少しずつ形になってきていることを実感します」と所長は話す。

重症、痴呆の利用者さんが増えている

 週1回30分未満の利用者さんは、症状が比較的軽度だったり、安定している人が多い。一方で今、重症の利用者さんが増えていると所長は言う。「ターミナルの方が多いときで5人いらっしゃいました。重症の困難なケースも増えています」。スタッフは何とか時間の調整をつけながら、ときには休憩時間を削ったり夕方訪問したりと頑張っている。

 重症の利用者さんのケースを紹介しよう。食道がんのオペ後の合併症で慢性呼吸器不全になった66歳の男性が自宅に退院してきた。IVHは週3回、どうにか食べられる状態だったが、嚥下がうまくいかず、栄養管理も気になるし、呼吸状態も悪かった。本来は担当医と病状についての確認をしてから訪問を開始したかったが、近くの開業医から指示書をもらったのは退院後しばらくしてからだった。

 「開業医の先生は往診はしてくれますが、主治医はがんセンターの先生だからと遠慮がある。それで、月に1回、がんセンターに通院されていたので、こちらでつくった報告書に手紙を添えて主治医に渡してもらい、メモで返事をもらうという方法を取りました」

 経堂すずらん訪問看護ステーションでは呼吸リハビリ、栄養管理などで毎日訪問した。奥さんも「何とか元気になってほしい」と懸命に介護にあたった。しかし、その男性はだんだん呼吸が苦しくなり、痰も多くなり、1日2回訪問をすることになった。すずらんだけではできないので、他の訪問看護ステーションにも入ってもらおうとお願いしていた矢先、状態が悪化して入院となった。毎日の訪問は2ヶ月間続いた。

 「本来の訪問看護は、『熱が出た、じゃあこの薬を』という対症療法ではなく、熱を出さないためにはどうしたらいいかを計画を立てて訪問することが大事です。そのために、重症の方の場合はできるだけ病院の主治医を訪問して話し合うようにしています。この男性の場合も、どうやったら少しでも快適に家で過ごすことができるか、主治医ともっと話し合いたかったんですが、それができにくかった。このあたりは大きな課題ですね」

 また、痴呆で独居という利用者さんが4人いて、1人は最近施設に入所した。1人は、近所の同じ家に何度も足を運んでは「近所の人がいなくなって寂しい」と延々と話すため、その近所の家では「頼りにされているのはわかるが、延々と2時間居座られると困る」と苦情を言ってきた。

 「痴呆で独居の場合は日常生活が把握できるようにヘルパーさんと連絡ノートをつくっています。それから、寂しいという気持ちがよけい不安定にさせますから、なるべく人の目が入るようなサービスを組んだり、デイサービスにつなげたりします」

 糖尿病で血糖コントロールの必要な痴呆の利用者さんもいる。介護度1の夫が介護度5の妻を介護していたが、夫が痴呆の診断を受けてしまった、という利用者さんもいる。

 今後、ますます重症や痴呆の利用者さんが増えてくるだろう。スタッフの力量もあげていかなければいけないし、やらなければいけないことは山積している。それでも所長は、働くなら訪問看護がいいと言い切る。

 「苦労はあるけれど、やっぱり訪問看護のやりがいは格別です。なんのかんの言ったって、利用者さんの『ここで人間らしい生活を送りながら生きていきたい』を支えているんですから」




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