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協同組合法vol.21

トピックス/介護保険制度の見直しは高齢者の目線に立って

東京勤医会副理事長・介護事業担当 矢幅 操

今回の見直しのどこが問題か

 ――05年の介護保険制度の見直しに向けた作業が急ピッチで進んでいます。今回の見直しのどこが問題か、あちこちでさかんに言われていますが、改めてどこに問題があるとお考えですか。

★厚労省が見直しの基本的視点であげている一つは、「制度の『持続可能性』を高める観点から、『給付の効率化・重点化』を思い切って進める」ということです。このままでは財源が持たない、給付の効率化をはかっていかに給付を抑えることができるかというわけです。

 しかし、介護保険制度は発足してまだ5年しかたっていません。ケアマネも慣れていないし、居宅介護事業所も慣れていない。見直すならば、現実の実態から高齢者の目線に立って改善していくべきなのに、財源問題が先にありきとなっている点が一番の問題です。

 制度創設の意味っていったい何だったのと言いたい。福祉の理念、社会保障の理念を基本に、介護保険を創設することで高齢者がどうしたらいきいきと生活できるかを追求するものだったはずです。

 また、「社会保障制度の総合化」を打ち出し、社会保障制度を効率的体系へ見直すとしています。先日の新聞報道によると、介護予防の分野に65歳以上の老人健診を含めると言いだしています。これもとんでもないことですが、保険と医療と介護を包括して財源を抑制するという方向をますます強めているように感じます。

「介護予防システム」は有効か

 ――見直しの大きな柱の一つが「介護予防システム」の導入です。要支援、要介護1の高齢者を振り分け、介護予防が適当と判断した人に筋力向上トレーニングや栄養状態の改善を指導することで重度化を防ぎ、膨らむ介護給付費を抑えるのが狙いです。高齢者の中に「ヘルパーさんの生活援助サービスを切られたら生活していけない」と不安が広がっています。

★厚労省は介護予防給付と介護保険の併給は認めないと言っています(11月10日全国介護担当課長会議資料による)。しかし、リハビリや栄養改善を半年、1年やったとして、結果が出るまでの間、その人の生活はどうやって支えるのか。介護保険の給付がなくて介護予防が本当に可能なのか具体的に見えないのが不安です。

 私の利用者さんで要介護1の90歳のおばあちゃんがいます。買い物に出ると疲れてしまい、家の中を片付けようにも意欲がわかない。ヘルパーさんが週1回だけ生活援助で入っているんですが、「明日ヘルパーさんが来ると思うと元気が出る」と言います。「ヘルパーさんが来れば話ができる。ヘルパーさんが掃除をしていると、私も少し動かなければと机の上や鏡台を整理したり、洗濯物をたたんだりします。そういう気分になるんです」と。本当にささいな喜びですが、それがおばあちゃんの生活の意欲につながっているんです。

 高齢者の方は、歩けるし食べれるし、買い物もできるけれども、家の中のことができないことがあります。たとえば高い所のものを取る、掃除機をかける、お風呂の掃除をするといったことができなくなる。それをヘルパーさんに週1回、1時間半なり2時間来てもらって支援を受けることで、気分が爽快になって意欲につながるし、安全にもつながります。高い所のものを取るために踏み台に登って、ひっくり返って骨折する、怪我をする。骨折が原因で寝たきりになったりする。高齢者の自立というのは危ういところで成り立っているところがあるんです。

 週1回、たかだか1時間とか2時間の生活支援がどれだけ有効か、この喜びを奪うことは断固反対です。予防給付を導入するにしても、生活援助が同時にないと高齢者の生活は守れないということをアピールしていくことが重要です。

 ――厚労省は「サービスが家事代行に偏り、利用者はそれに依存して自立への改善につながっていない」と言っていますが。

★それは間違いです。やれることを取り上げてやっているヘルパーさんは基本的にいません。生活の支援というのは、食事を一緒につくったりして、利用者さんがやれるところは自分でやっていただくようにすることで、そこにヘルパーのプロとしての役割があるんです。それを家事代行と決めつけて、「何でもかんでもやってあげるから、高齢者は自立できなくなる」と言うのは間違いだし、ヘルパーさんの専門性を否定することになります。

現実の困難を解決していく具体的な提案を

 今回の見直しでは、「地域における総合的なマネジメントを担う中核機関として『地域包括支援センター(仮称)』を整備する」と言っています。今、ケアマネは困難なケースにぶつかって非常に苦労しています。地域包括支援センターにスーパーバイザーを置いて「困難ケースの相談にも乗りますよ」ということですが、今だって、それぞれの自治体に基幹型の在宅支援センターがあって、困難ケースがあったら相談してくださいと言っています。うちの事業所も実際に相談するんですが、なかなか解決まで行かない。困難ケースは誰がやっても困難なんです。

 たとえば、痴呆と精神科症状がドッキングしたような困難事例があります。そういう場合、逆に基幹型の在宅介護支援センターからみさと協立病院の居宅介護支援事業所に「どうしたらいいか」と相談されるケースがけっこうあるんです。これは、医療と介護が連携を密にしないと困難ケースに取り組めないということを示すもので、単に包括センターをつくっても、うまく機能しないでしょう。

 それから、「新たなサービス体系の確立」として「地域密着サービス」を創設すると言っています。その中の一つに「小規模・多機能サービス」という施設体系を提唱していますが、これは条件が合えばいいかなと思っています。

 ――宅老所みたいなものですね。

★そうです。通うこともできるし、訪問してもらうこともできるし、泊まることもできるという施設です。痴呆のある人がどうやったら安心して地域で暮らせるかを考えると、こういう施設があれば、入所せずに、家から通いながら地域で見守られながら暮らすことができます。これまでNPOの人たちが困難を抱えた人たちを、宅老所を作って支援してきました。今までは介護保険の給付がありませんでしたが、「小規模・多機能」は給付対象となります。痴呆に対応する政策、事業としてはいいのではないかと思います。

 そういう意味では今回の見直しは、対応としては5年間の実績に基づく提案もありますので、根本的な方向性の違いに対しては「憲法にもとづく権利としての社会保障」という視点で厳しく追求しつつ、現実の困難を解決していくための具体的な提案をしていく。この両面から迫っていくことが重要だと感じています。

数年先を見越す政策をつくっていく

 ――地域包括支援センターができると、在宅介護支援センターの役割はどうなるのでしょうか。

★在宅介護支援センターは統合して、現在の8000ヵ所を5000ヵ所ぐらいに減らすと言っています。それで今、自治体に相談に行っていますが、国の方針がまだ出ませんので、自治体としてはなんとも言えないと。先の見通しが立たないようです。

 それから、まだ不明朗なのが通所リハビリ、デイケアのサービスがどうなるかです。要支援、要介護1の人がおおぜい通っていますので、予防給付に移行した場合、介護保険と併給しないとなれば大問題です。

 それから、見直しでもう一つ、地方自治体の権限が強化されることになります。ケアプランを担当している居宅介護事業所がもっとも利用者さんの実態を把握していますので、その実態に即して自治体と話し合いながら、こういう事業がいいのではないかという提案をしていく必要があります。

 ――自治体の権限が大きくなって、きめ細かな政策ができるとしても、財源がないとなると、消極的にならざるをえない自治体が出てくるのではないでしょうか。

★そこが大きな問題です。自治体によって格差が広がる危険性をはらんでいます。

 訪問看護の分野もまだ明確になっていませんが、基本は24時間、365日をベースにしていかないといけません。うちは24時間の緊急加算体制をとっていますので、03年の診療報酬の見直しでは大打撃を受けました。この1年でやっと経営的にも成り立つところまできました。質を高めて、利用者さんに寄り添える看護ができたらと思っていますが、今、長期に入院できるところがなくなっていて、重症化していて大変な方を在宅でみるケースが増えています。家族の介護と訪問看護、訪問診療、訪問介護というネットワークができていないと、支えることができない。ネットワークはこの間広がってきてはいますが、さらに強化していく必要があります。

 最近、尾道の医師会が頑張っていて、開業医がサービス担当者会議に全ケース出席するという「尾道方式」が全国から注目されています。こういうことも研究しながら、医師、介護職員、訪問看護師などがどう利用者さんに寄り添うか、その寄り添い方を一緒に考えていく。そして、それをやるうえでの制度としての問題点を、この見直しの機会にぶつけていくことが重要です。今のままだと違う方向に行ってしまいそうな危機感があります。闘いと対応をしっかりやっていかないといけないと思っています。

 ――最後に勤医会としての到達点を。

★勤医会は遅れてスタートしましたので、量的な拡大で走ってきました。その中で介護分野で活躍する職員が100名を超えました。04年に入って、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、通所リハビリなどは順調に推移してきています。事業収益は10億2000万円、全体の収益の7・6%です。「医療も福祉も労働者の生活も」を合言葉に頑張って、地道に努力してきた結果が出てきていると思います。特に訪問看護分野は、本当に一人ひとりコツコツと努力してきた結果として、目標に向って大きな前進をつくりだしてきています。

 大きな動きとしては、11月8日に社会福祉法人「世田谷さくら福祉会」が認可されました。まさに総合的な介護事業がこれから本格的に立ち上がる。勤医会では数年先を見越す政策をつくっていこうということで、政策委員会を発足させました。たくさんの人の声を聞こうと、懇談会を何回も開催してきました。目下政策を検討しているところで、今月中に答申案をまとめたいと考えています。

【勤医会グループ介護事業の概況】(2004年11月現在)


東京勤医会 外苑企画商事 ふれあいサポート はたがや協立診療所
事業所種類 事業所数/利用者数 事業所数/利用者数 事業所数/利用者数 事業所数/利用者数
[千駄ヶ谷地域]
居宅介護支援事業所 8ヶ所/514件 2ヶ所/11件 1ヶ所/57件
通所リハビリ 2ヶ所/31.2人(1日平均)


訪問診療 4ヶ所/228人

あり
歯科訪問診療 2ヶ所/71人


訪問看護 5ヶ所/366件1572回


(訪問リハ) (5ヶ所/191回)


訪問介護

5ヶ所/231件
(3394.5時間)

[東葛・みさと地域]
居宅介護支援事業所 13ヶ所/351件 2ヶ所/12件

通所リハビリ 2ヶ所/63.1人(1日平均)


デイサービス 1ヶ所
(12月より開始。週3回より)



訪問診療 4ヶ所/235人


歯科訪問診療 1ヶ所/20人


訪問看護  7ヶ所/336件1546回


(訪問リハ) (70回)


訪問介護

1ヶ所/37件
(714.5時間)





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