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災害が起きると、「自衛隊出動」「空から救助」といった報道が大々的にされるが、黙々と役割を果たす消防団員が注目されることはほとんどない。新井雅之さん、30歳。台風22号の暴風の中、消防団員として決壊の恐れのあった江戸川の土手の監視にあたった。地域の大切さ、いのちの重さが体で実感できるようになったという。
練習は正気の沙汰じゃない
消防団への誘いを受けたのは27歳のときですが、正直悩みました。怖そうだし、保守バリバリみたいで、いいイメージがなかった。それでも断らなかったのは、地域のつながりの大切さみたいなものを「東葛健康まつり」で感じていたからだと思う。24歳のときに、「若手を起用しよう」ということでぼくが責任者に選ばれ、それ以降も何年間か事務局次長をやって、地域とつながる面白さを知りました。この経験がなかったら、入団しなかったと思います。
団員は定員15名のところ13名。若者に人気ないんです。所属は「野田市消防団中央第一方面隊四分団」。ぼくが生まれ育って今も親と一緒に住んでいる野田市上花輪が管轄地域です。
今年5月、野田市消防団操法大会に出場し、ポンプ車操法の部で3位に入賞しました。ぼくは筒先の担当です。練習は正気の沙汰じゃないですよ。1週間に1回、夜7時から集まって11時ごろまで練習。大会直前になるとほぼ毎日です。吐いちゃうこともある。
なぜこれほどの練習をするかというと、実践では練習の20%ぐらいの力しか出ないからなんです。火が出ていて、野次馬が「何やってんだ、早く消せ!」と怒鳴っている中での消火活動だから、ぼくも最初のときは、足は震えるわ、体は固まるわ……。ですから、本番を想定して練習を積むわけです。
地域に目配りをするようになった
団員は受令器という携帯無線を持たされ、消防署から指令が入ると、夜中の2時、3時でも詰め所(消防センター)にかけつけます。消防団が「出場」する火災は月に1回ぐらいですが、だいたいは詰め所で待機です。消防団の場合は出動ではなく出場と言います。寝るときは受令器と団員のはっぴ、洋服、手袋を枕元に置いて、靴もすぐに履けるように出しておきます。「消防署があるのに、消防団がなんでそこまでやるの?」と笑うかもしれませんが、人命救助というのはみんながバカにするぐらいの準備が大事であって、妥協を許してはいけない、と教えられています。5秒〜7秒の遅れがいのちを救えるかどうかの分かれ道になるそうです。
火災で消防団がやらなければいけないことは、消火活動よりも見守りです。真冬の夜中だろうが、銀色の耐熱防火服を着て、後片付けをしながら6時間ぐらい様子を見ます。鎮火したあとにまた出火することが多いからなんです。夜中の12時ごろ現場にかけつけて、朝6時ごろまでかかり、家に帰ってシャワーを浴び、そのまま出社したこともあります。
団員は災害が起きている現場に乗り込むわけですから、「迅速、冷静、鋭敏な感覚」を3つの柱として教えられます。火事や災害の現場は妥協を許さないし、言い訳がききません。ちょっとした判断ミスが自分のいのちも要救助者のいのちも仲間のいのちもおびやかす。いのちの重さ、大切さを体で実感するようになりました。
それから、地域に対する責任を否応なく感じるし、目配りもするようになりました。歩きながら、「ここで火災が起きると、消防水利はあそこにあるから、ここを右に回って……」なんて考えてます。
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