患者さんの30%がメインテナンス
新松戸診療所歯科は新松戸駅徒歩3分、新松戸診療所などが入っている勤医会のビルの2階にある。1995年11月にオープン、来年は10周年を迎える。
この歯科では今、歯科治療が終わっても、定期的に通ってくる患者さんがいるという。それもどんどん増えているという。歯科治療は「痛い、怖い」というイメージがあって、治療が終わったらできればサヨナラしたい所だ。それがなぜ、定期的に通う人が増えているのだろう?……というわけで、新松戸診療所歯科を訪問した。
「それは歯科メインテナンスと呼ばれるものです」と上保泰子事務長は教えてくれた。正式名は「歯周疾患継続総合診療」。名前が長くて言いにくいせいか、歯科関係者は「P総診」と呼んでいる。
この歯科メインテナンスは2年前から歯科保険に導入された制度で、治療が終了した患者さんに対して、1〜3ヵ月間隔で歯と歯肉をチェックし、歯科衛生士がプロフェッショナルな歯のクリーニングを行う。つまり、口腔健康管理のことだ。
歯周病はほうっておくと、歯が抜けてしまう怖い病気であり、抜歯の原因のナンバーワンだ。しかし、歯茎から出血したからといって、歯医者に飛んで行く人は少ない。だから、自覚する前にどんどん症状が進んでいく。歯肉炎も含めると、日本の成人の70%〜80%が歯周病にかかっているという。国民病ともいうべき歯周病を予防することは「8020運動」の最大ポイントであり、そのためにできたのがメインテナンスという制度なのだ。
「つまりは歯科における慢性疾患管理といったところですね。うちはいち早くメインテナンスに取り組んで、その成果が上がっていて、今では受診患者さんの30%がメインテナンスの患者さんです」と事務長は言う。
ギリギリの体制で頑張っている
それにしても、30%とはすごい数字だ。メインテナンスは民医連以外の開業医にも浸透しているのだろうか。近所の歯科医にかかったとき、メインテナンスのメの字も出なかったが……。
「たしかに、開業医で取り組んでいる所はまだ少ないようです。メインテナンスをやるためには歯科衛生士をきちんと位置づけることが不可欠ですが、技術面においても待遇面においてもそれをきちんとやっている開業医は少ないんです」と宮前いずみ所長は説明する。
じつは宮前所長も、取り組みを開始した当初は「いったい何人の患者さんが定期的に来てくれるだろうか。2、3回で中断してしまう人が多いのでは」と不安だったという。ところが、いざ始めると、「定期的にみてもらえると安心だ」と、メインテナンスの良さを理解し、定期的に通ってくる患者さんが多かった。
「メインテナンス以前にも、6ヵ月〜1年のリコールシステムをやっていましたので、すんなり移行できたという面もあります」と所長。現在、患者数は月平均500人、うちメインテナンスの患者さんは月に130〜150人であり、なおも増加中だという。
常勤スタッフは歯科医師が宮前所長と藤野健正先生の2人、歯科衛生士が3人(うち1人は育児休業中)、それに上保事務長の計6人。ほかに東葛歯科から応援の歯科医師が2人入っており、事務は週3回派遣でまかなっている。
「ギリギリの体制の中で、みんな、懸命に頑張っています。特にメインテナンスは歯科衛生士の存在が大きいのですが、育児休業中の衛生士の穴を埋めるためにパートを募集したところ、これがなかなか見つからなくて。人員のところが課題です」と所長は話す。
医療・経営構造の転換に
東京勤医会歯科部ではメインテナンスを積極的に位置づけており、今年7月、患者さんに「メインテナンス・アンケート」をお願いした。「なぜメインテナンスを続けているのか」の質問に対して、「定期的にみてもらえるので安心」の回答がもっとも多く、「不快・痛い」はもっとも低かった。これからもわかるように、定期管理は安心できるということと、メインテナンスは歯科治療につきものだった不快さも痛さもないということだ。
「メインテナンスは患者さんにとって安心というだけでなく、じつは私たちにとってもいい制度です。自分たちの医療の見直しができるんです。悪くなっていると思わなかった所が悪くなっているのを見つけることもあるし、見落としがあったことに気づくこともあります。それに、歯科衛生士も対応しますから、複数の目でチェックすることができます」
03年4月からの健康保険本人3割負担の導入により、歯科でも全国的に受診抑制が起きた。にもかかわらず、新松戸診療所歯科は患者件数を大幅に伸ばしている。新松戸駅前は7、8件の歯科診療所がひしめきあう激戦区なのに、近くに住む患者さんが多いのだ。
「これもメインテナンス効果です。メインテナンスは患者件数を伸ばす効果があり、医療構造も補綴中心の歯科医療型からメインテナンスを取り入れた予防・管理型に確実に移行しています。それによって経営構造も転換しています」と藤野先生は語る。
東京勤医会歯科部ではメインテナンス・プロジェクト会議を月に1回定期的に開催し、5歯科院所が足並みをそろえてメインテナンスの取り組みを進めている。
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