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高山に初冬の冷気が漂う秋深い季節。紅葉の撮影を終え、標高2000m、浅間山の肩を駆け下る。夕日を浴びて黄金色に輝く唐松林が闇に落ちようとする頃、それは起こった。
崩れゆくレンズ雲が幾層にも重なる。大波が空一面に打ち寄せるがごとく雲のうねりが視界を覆い尽くす。迷わず立ち止まる。三脚を引き出し、レンズを掴みだし、カメラをセットする。その時、紅蓮の夕日が雲を突き抜け目前に壮麗な光芒が満ち始めた。
人智の及ばぬ自然の凄み。
ただ圧倒されるのみ。言葉で表現することすらかなわぬ。雲と光の一大叙情詩。人が表現し切れるわけがない。まして写真ごときで及ぶすべもない。しかし撮らずにはいられない。及ばずとも挑め、山間に立ちつくし、シャッターを切り続ける。過去幾多の山行にもこれ程の自然の気まぐれには出会わなかった。
わずか10分間、大空を埋め尽くした天界のショーは、冷気と共にやってきたとばりの彼方へ消えていった。
【写真と文】
代々木病院・介護保険企画室/佐藤 博之 |