まず聞くこと
三郷しいの木薬局は2001年4月1日、みさと協立病院の向いにオープンした。名前は三郷市の市の木である椎の木からつけた。
処方箋のほとんどはみさと協立病院の患者さんからのものであり、月に2300〜2400枚、1日平均100枚だ。薬局をオープンするにあたっては躊躇(ルビ・ちゅうちょ)があったと管理薬剤師の藤竿千恵美さんは話す。
「処方箋の8割は精神科の患者さんです。統合失調症の方が多く、最近はうつ症状の方も増えてきました。薬局が外にできただけのことですが、高齢者や精神科の患者さんは、どんな小さな変化でもその新しい環境に慣れるまで大変なんです。患者さんにとってデメリットのほうが多いのでは、と不安でした」
たしかに当初は不安そうな患者さんもいた。三郷しいの木薬局の薬剤師たちは、たんに薬の説明だけでなく、様子を見ながら、ひとことふたこと声をかけ、少しでも気持ちを開いてもらえるような努力をした。
「しばらくすると、私たちの不安がはずれていたことがわかりました。患者さんは、投薬されている薬への疑問、副作用への不安も含め、予想以上によく話してくれるんです。一番特徴的なのは、電話がかかってくるようになったことです」と藤竿さんは言う。病院の院内薬局だったときには、薬剤師に電話をかけてきて相談する患者さんは皆無に近かった。それが、直接電話をかけてくる。「具合が悪いが、どうしたらいいか」「今日は主治医がいない。次の受診日まで持っている薬で何とかなるだろうか」「頓服薬をいくつかもらっているが、どれを飲めばいいか」など、相談内容はさまざまだ。
「状態の悪いときは、自分で決断できず、不安感が強くなります。自分のことを聞いてもらって、同意してもらいたいんです。本人が一番つらいわけですから、まずその症状を聞くこと。これが最初の重要なことです」
介入したり叱責したりすることは禁物だという。話を聞き、受容し、次に問題点の整理をする。薬局で解決できる相談もあるが、医師に相談したほうがいい場合もある。話を聞きながらそれを整理し、アドバイスする。
「ここをオープンして患者さんが近くなりました。以前はこちらも調剤で精一杯で話しかける余裕がありませんでした。『この患者さん、こんな方だったんだ』と、新しい発見があります」
カウンセリング能力を高めたい
みさと協立病院には精神病棟と老人病棟があり、その関係で内科の患者さんはお年寄りが多い。精神の患者さんにもお年寄りにも共通することは、自分の居場所が少ないという点だ。安心していられる場所、癒される場所を1つでも多く持つことが、本人の意欲を引き出し、治療にもつながる。
三郷しいの木薬局では「薬局に行って相談してみよう、話してみよう」と思えるような雰囲気づくりに心を配る。話を聞くという姿勢はもちろん、待合室の雰囲気づくりも大事にする。
「処方箋がなくても、誰でも気軽にフラッと立ち寄って、お茶を飲んでテレビを見て、ひとときホッとして帰っていく。そんな居場所になれたらと思っています。デイケアの散歩の途中で立ち寄っていかれる方もあります」
それから、薬ができるまでの待合室で待っている患者さんの様子、状態が普段よりいいか悪いか、などにもさりげなく気を配る。
「精神の患者さんが多いということもあって、ここの薬剤師は服薬指導を通してのカウンセリングの能力が求められます。でも、薬剤師はそれを訓練されてきていませんので、少しでもカウンセリング能力を高めるために、情報交換や話し合いを大事にしています。たとえば、対応に苦慮したケースで、どう大変だったか、どうすればいいかなどを朝のミーティングや仕事の合間に話し合い、情報を共有し、解決策を探るようにしています」
薬局として最大限のサポートをしたい。そのために何をしたらいいか、何ができるか、5人の薬剤師さんたちは日々心を砕く。「大切なのは、やさしさ」と言った藤竿さんの言葉が胸の奥に響いた。
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