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協同組合法vol.16

事業所を訪ねる(15)
(医)東京勤医会 農大通り診療所
開設10年を迎え、医療活動の新たな前進を


16年の歴史

 農大通り診療所は1995年3月1日、東京・世田谷区経堂にオープンした。この日は3月というのに前夜からの雪が降り続き、患者さんが少なく、様子を見に来た友の会会員が見かねて、「受診に来てくれ」と奥さんに電話をかける一幕もあったという。「今年で10年目を迎えましたが、実際はつくる会の運動と合わせて16年の歴史が刻まれているんです」と尾藤文江看護長は話す。

 当時、東京23区で民医連の院所がなかったのは千代田と世田谷の2区だけであり、世田谷に民主診療所をつくりたいという住民の願いは切実だった。89年11月に第1回準備会が開かれ、90年1月に「つくる会」が結成された。こうして6年がかりの運動が実って開設の運びとなったわけである。

 しかし、出だしから逆風が待ち受けていた。「開設直後から診療所は悪戦苦闘しました。初めての民医連の診療所ということで警戒されて、2年間は医師会に加盟させてもらえず、区民健診を行うことができなかったのです」と尾藤看護長。

 しかも、この地域は「医療銀座」と言われるほど病院や診療所が多い。さらに、これからというときに初代中村正樹所長が東京民医連全体の課題解決のために、開設わずか4ヵ月で北病院の院長として移籍することになった。

 友の会や土建、民主団体を中心に患者さんは世田谷全域から来てくれた。その一方で近隣の患者さんは思うように増えず、苦戦した。

近隣の患者さんが増えている

 何はさておき、近隣の患者さんに来てもらうことだ……職員も友の会の会員も必死だった。尾藤看護長は「近隣の患者さんが増えてきたのは4、5年ぐらい前からですね。口コミで広がってきたんです」と語る。近隣の患者さんから信頼されるようになった理由の1つは、訪問診療をきめ細かくやったことだという。「開業医の高齢化が進み、往診のできない所が増えてきました。それにうちは、在宅酸素やIVH(中心静脈栄養)など医療依存度の高い患者さんも受けていますので、保健福祉センターや在宅介護支援センターなど公の機関からの紹介も増えています」

 99年に経堂すずらん訪問看護ステーションが開設され、在宅での連携がとれるようになったことも大きな強みとなり、現在、40人の患者さんの訪問診療を行っている。

 また、外来も他の診療所にはない強みがある。循環器(1単位)、呼吸器(1単位)、膠原病・リウマチ(4単位)と、一定の専門性をもたせ、どの病気でも専門の医師につなげるようにしている。

 健診は土建を含めた企業健診が多く、月に100件を超えるようになった。「企業健診は健診内容の種類が多く大変ですが、患者さんにつながる可能性も考慮して、丁寧に受けていこうと頑張ってきました」と森勢事務長は話す。

 こうした地道な努力の甲斐あって、おととし、初めての黒字を出した。患者さんは現在、健診も含めて月に900人前後になった。

地域の人とスクラムを組んで

 強みといえば、農大通り診療所友の会(正式には代々木病院友の会世田谷支部)の活動が活発であることも大きい。「自分たちの診療所を守り発展させたい」という視点で、地域の医療要求を敏感にとらえた運動を組んでいる。

 たとえば99年、区民健診の有料化が打ち出されたが、他の民主団体と組んですばやく反対運動を起こし、見送りにした。それが今年、またもや出され、署名運動を展開するなどしてまたも阻止することに成功した。「区は虎視眈々と有料化をねらっていますが、友の会は反対運動と同時に、健診を受ける人を増やすために保健委員会を立ち上げて会員に健診のお誘いの電話をする活動もやっています。すごいパワーです」と森勢事務長は言う。

 世田谷区は人口が23区の中で一番多いにもかかわらず、交通の便はすこぶる悪い。地図上では近くても、電車を乗り継がなければ診療所に来ることができず、「行きたいけれど遠くて」という人もかなりいる。しかも階段ばかりだから、高齢者や障害者は1回の乗り換えでも苦労する。

 交通の便の悪さを嘆くだけでなく、少しでも住みよいまちにするために自分たちで解決しよう、というわけで、友の会は診療所送迎の取り組みを開始した。「あと少しで会員送迎車運転ボランティア事業がスタートします」と友の会の山崎会長と岩永事務局長は意気込む。先日、長野県塩尻市の友の会が取り組む送迎ボランティア事業を見学してきたが、そこでは運転手が13人、利用者が230人という規模で毎日活動していた。「これなら行ける!」という手応えをもったという。

 3月、念願だった友の会事務所が診療所の真向かいにできた。「着替えて髪も整えて診療所に通うということが生きる意欲につながっている方もいます。会員さんが診療所でみてもらい、終わったらここに寄ってお茶を飲みながら話をする。ささやかですが、お年寄りには何よりのことなんです」と2人は話す。

 今年7月、初代中村所長が5代目所長として戻ってきた。新所長は決意をこめてこう語る。「本当に悪戦苦闘した9年間だったと思います。友の会をはじめとした地域の人たちに支えられて、支えられて支えられて、やっと一人立ちできるところまで来ました。今までは皆さんに手を引いてもらってきましたが、これからは一緒にスクラムを組めるような診療所にしていきたいと思います」

 森勢事務長もは「ヘルパーステーションふれいあサポートさくら、経堂すずらん訪問看護ステーションとの連携をさらにすすめ、また、グループホームやデイサービスもできますので、この地域でネットワークをつくって、地域の皆さんに責任をもった医療を展開していきたい。これを本当に実践していく時です」と力強く語った。




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