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加藤さんは小学校1、2年の頃、アントニオ猪木対ストロング小林の試合を見て、心臓がドキドキした。以来、猪木ファン、プロレスファンになり、病高じて大学ではプロレス研究会の会長にまでなった。プロレスをこんなに熱く語れる人が勤医会にいたなんて……。加藤ワールドは何だかとても可笑しくて、そしてその可笑しみのある懸命さが胸を打った。
一発の技で納得
僕は猪木をずっと見続けてきました。プロレスのビデオはたくさん持っていて、繰り返し見るけど、初めて見た猪木対ストロング小林の試合は今でもドキドキする。猪木が最後、ジャーマンで決めるんだけど、その一発の技で、うーん納得という感じ。まさに名勝負です。「熊殺し」の異名をもつ極心カラテのウィリー・ウィリアムスと闘ったこともありますが、あれは胃が痛くなった。プロレスの試合はビデオで何度見ても面白い。極上のものは芸術作品です。
なぜ面白いか。プロレスはどう見たってスマートじゃない。むしろ、その対極にある。ハレンチだし泥臭いんです。でも、そこに人間の原初的なエネルギーを感じるんです。
「プロレスは八百長だから、つまらない」と言う人がいるけど、映画を見ながら、「これは演技かどうか」なんて考えないでしょ。当然演技なんだから。どっちが勝つかわかる格闘技はプロレスしかありませんが、要はその勝ち方、負け方です。このレスラーが出たら、バックドロップをしてほしい、このレスラーならチョップをしてほしいと観客が願う。願った通りの技が出る。観客は沸く。憎まれ役、悪役は観客から本当に憎まれるような反則技を使う。
勧善懲悪のシナリオを取り入れたのは力道山でした。1950年代、観衆は力道山の試合に熱狂しました。力道山はいつも試合序盤に相手の反則を受ける。観衆の興奮が沸騰点に達する瞬間、空手チョップが炸裂する。この空手チョップは敗戦後のアメリカコンプレックスを拭い去ってくれる役目を果たしたわけです。
猪木の面白さは、観客を裏切るところにあるんです。「こんなことをするのか!」と思わず引き込まれる。ジャイアント馬場は調和の安心感。あの間の取り方、あの動きで観客をあきさせない偉大さ。いずれもアスリートとしての実力がないとできません。
プロレス復興!
プロレスは、蹴って殴って、ボディスラムで投げて、と、この繰り返しだけなんだけど、あきさせなかった。だけど今のプロレスは、技をゲーム感覚で見せるだけになってしまった。たしかに昔のプロレスはまどろっこしいから、観客はより強い刺激を求めます。それに媚びたプロレス界は刺激を満たすための技を開発して、危険な技で怪我をしないようにとマットを柔らかくした。その結果、人間くささが全くないプロレスになっちゃった。今はプロレスの観戦に行かなくなりました。ウキウキしなくなったから。
では、今、人気のあるK−1やPRIDEはどうか。強さも華もあるし、エンターテイメント性もある。今の時代にはマッチしているのかもしれないけど、僕は1回見たら、2回見たいとは思わない。勝負論だけが前面に出ているせいか、感情を引きずらないんです。
プロレス復興のためには、何が必要なんだろう。そんなことを考えながら猪木のビデオを見ると、これがやっぱり面白い!
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