世田谷地域初の事業所として
「ふれあいサポートさくら」(以下「さくら」)は世田谷区豪徳寺のアパートの一室に2003年10月1日オープンした。(有)ふれあいサポートでは世田谷区で初めての事業所だ。開設のいきさつを彦坂恵子所長は説明する。
「勤医会グループでは世田谷区に高齢者福祉施設の総合ケアセンターを建設する準備を進めており、そのセンターの2、3階は痴呆の方のグループホーム、1階にはヘルパーステーションとデイサービスセンターが入る予定です。ついては、1日でも早く地域に根ざそうと『さくら』がオープンしました」
総合ケアセンターはお年寄りの健康と暮らしを守るために医療と福祉を総合的に展開しようという施設である。それを成功させるためには、今から医療と福祉の連携を充実させていく必要がある。小田急線の経堂駅を中心に、東京勤医会の農大通り診療所と経堂すずらん訪問看護ステーションがある。ここに「さくら」が加わることで、世田谷地域での医療と福祉の連携の基盤ができたわけである。
開設4ヵ月が過ぎ、利用者は現在20人。今のところ、すずらんと農大通り診療所のケアマネージャーからの紹介がほとんどで、地域の広がりはこれからというところだ。スタッフは彦坂所長とサービス提供責任者の土井雪さんの2人が常勤、パート職員が5人という構成だ。「ヘルパーさんはほとんど『渋谷』本社で働いていた経験があり、仕事に対する意識の高い人たちですから、とてもまとまっています」と所長は話す。
人生経験の豊かな所長と20代という若手の土井さん。親子ほどの年の差ながら、包み込むような温かい人柄は共通していると見た。
ぼんやりしていると見えない
個々人の生活の中に入っていって、その人の日々の暮らしを支えるのがヘルパーである。暮らし方は人それぞれ、一人ひとりとつながって受けとめていくのが仕事だ。「ぼんやりしていると見えないんですよ」という所長の言葉がそれを端的に表す。
たとえばAさんの例で紹介しよう。「すずらん」から紹介されたAさんは妻を亡くして一人暮らしになった70代の男性で、人工肛門を装着している。学者として仕事一筋に生きてきて、家事は苦手だ。掃除をしないので、大きな埃がたまっているが、本人は気にしない様子。子どもは外国暮らしで、近所の人との交流もなく、ヘルパーが入ることもしぶしぶだった。「まず話してもらえる関係をつくっていくことが大事です」と土井さんが言うように、ヘルパーさんたちの努力が始まった。その甲斐あって、Aさんに変化が表れ、自分のことを話すようになった。さらに自分から頼みごとをするまでになった。
「配食サービスでお弁当を頼んでいますが、もっと野菜を摂らなければという自覚があって、『ほうれん草のおひたしの作り方を教えてほしい』と頼んできたんです。それ以来、週に1回、ほうれん草のおひたしを一緒に作るのが楽しみになったようです」と土井さん。
たかがおひたしとはいえ、物忘れの出てきたAさんは1週間たつと作り方を思い出すのに時間がかかる。しかし、ヘルパーの支えがあれば自分の力で作ることができる。その喜びは非常に大きいらしく、週1のほうれん草のおひたし作りは3ヵ月以上続いている。
「Aさんは明らかに変わりました。『ヘルパーさんが来てくれるのが楽しみだ』と言ってくれるし、『自分は仕事人間だった』『子どもともっと関われば良かった』といった話までするようになったんです。ヘルパーにいろいろな悩みなどを相談される方も多いです。私たちはそれらをきちんと受けとめ、ケアマネージャーと相談しながらすすめています。一人ひとりの利用者さんと深くつながっていってこそ、地域に根ざすことになると思うんです」。所長と土井さんは異口同音に語った。
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