なぜ給食共同事業なのか
――健和会との給食共同事業が進められていますが、なぜ「共同化」が必要なんでしょうか。
★まず病院給食をめぐるこの間の情勢を簡単にお話しします。1986年、厚生省(当時)は病院給食の営利企業への委託を、93年には院外調理を認め、給食施設を病院の必置施設から外しました。また94年には病院給食を有料化し、診療報酬上の「療養の給付」としての位置づけを外しました。
こうした政策の中で、営利企業の進出が進み、全国の病院給食の委託率は現在50%を超え、残念ながら、民医連院所の中でも一般企業に委託する所が出てきている状況です。
そういう中で、3年前、勤医会と健和会は合同プロジェクトを立ち上げ、給食部門の問題点を?患者サービス、?衛生管理、安全性の確保、?経営、の3点から掘り下げ、今後のあり方を探ることになりました。
(1)患者サービス
行事食にも取り組むとか、選択メニューもやってきました。患者さんの意見を聞くための病棟訪問にも取り組んできました。しかし、今の調理システムと労働条件の中では限界があります。
(2)衛生管理、安全性の確保
毎年、保健所の立ち入り検査がありますが、私が東葛病院にいた頃は栄養課の改善命令がいつも多かったです。今は調理、盛り付けなどの清潔作業区域と洗浄などの汚染作業区域は分離するのが常識になっていますが、東葛病院の厨房はかなり以前に作られたもので、分離されていません。労働環境としても、高温多湿の中、夏場は汗だくで仕事をするといった具合で、衛生管理上は大変な問題点を抱えているのが病院の厨房なわけです。
(3)経営
現状の給食システムでは、短時間で大量の食事を作らなければなりませんから、人手がかかります。東葛病院の給食部門の赤字は年間4500万円規模になっています。今のような調理システムをとっている病院の給食部門は同様の経営構造です。
この3点から検討した結果、01年10月、同プロジェクトは「給食業務を共同事業化し、センター・サテライトキッチン方式で食事を供給する方法が最も合理的である」との答申を出しました。センター・サテライトキッチン方式とは、クックチルや真空調理などの新調理システムを導入して、センターで調理・保管し、それを病院や介護施設などサテライトキッチンに搬送・保管し、直前に再加熱して提供するというものです(図参照)。
2002年12月には、それを事業化するための「給食共同化事業計画答申」が出されました。「目的と意義」として前述の3点を解決・改善するために6点をあげていますが、大きくいうと、医療改悪の連続で厳しさが増す情勢の中で、「生き延びるためにはやむを得ない」という考えで委託できるものはどんどん委託するということではなく、無差別平等の医療の旗を掲げながら、「医療も経営も職員の生活も守る」立場で、共同事業として新しい給食部門のあり方を追求し、民医連の提唱する「安心して住みつづけられるまちづくり」の活動に、食を通じて役割を果たしていこうということです。
何がどう変わるか
――では、具体的には何がどう変わるのでしょうか。
★わかりやすいように、さきほどの3点で説明しましょう。
(1)患者サービスは――
私たちの計画の特徴は、センターからは未完製品を送り、サテライトで最終的に仕上げる調理システムにしていることです(一部の事業所を除く)。そのために、治療食としての個別対応もしっかりと出来ますし、メニューも豊富になりますし、おいしく仕上げられます。
さらに、計画調理によって時間的な余裕ができますから、患者さんとのコミュニケーションをとる時間を増やすこともできます。また東葛病院では、病棟改修にあたり、食堂を設置しますので、自立歩行可能な方などの喫食条件が向上します。
(2)衛生管理・安全性は――
この方式の従来との大きな違いは、調理から提供までの過程の中に「配送」という工程が増えることです。問題は安全性をどう確保するか。プロジェクトでは、危害が発生する工程を特定し、それに対し、必要な安全対策を重点的に講じるという手法・システムである「HACCP(ハサップ)」を導入し、衛生管理システムを構築する提案をしています。
調理品の保管、配送段階で重要なのは、食中毒菌の増殖を抑えることです。それは0℃から3℃という氷温帯(チルド)を保つことで可能になります。
そこで、センターでは最短冷却してチルドで保管、配送トラックもチルドで温度管理をし、サテライトでもチルドで保管するという方法をとることになります。
(3)経営面は――
今回の投資額はセンター用地の取得、建物の建設、機器購入などで約7億です。この投資額ではすぐに経営が改善するというわけにはいきませんが、一番のメリットは、効率的な業務システムとなることと人員の再配置で生じる余力を介護・福祉分野への展開など、今後の事業展開に活かすことができるようになることです。
労働組合とは2年間にわたって、安全性の確保や経営見通しなどについて疑問に答えるなど協議を重ねています。一般企業への委託化ではなく、「医療も経営も職員の生活も守る」という基本的な立場を堅持しながら自分たちで担っていく事業という点では一致していると思いますし、安全性の確保でも配送段階とサテライトについて、実地の検証や専門家など第3者の意見も聞いて確認しあうところまできています。
テストキッチンを設置
――どこまで進んでいますか。
★センター用地(600坪)が三郷市に決まりました。会社設立の準備も進めており、社名も「?給食協同サービスリップル」と決まりました。リップルとは「波紋」のことです。「幾重にも輪を広げていく、影響が広がる」という意味を含み、食を通じて地域に貢献していきたいという意気込みを表したものです。?福祉協同サービスが親会社で、全額出資します。
勤医会の片桐学さんが専任事務局員として配置され、みさと健和クリニックの一角のテストキッチンで、新システムでの調理を始めています。稼動は2005年3月をめざしています。
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